902 / 981
第78話
「とりあえず由弦は落ち着け。そんなに大声を出しては雪也が起きるぞ?」
言われ、ハッとして由弦は己の口を手で覆った。恐る恐る雪也の方を見れば、その瞼はしっかりと閉ざされており、深い寝息が聞こえる。ジッと見つめてもその様子が変わらないことに安堵して、由弦は深く息をついた。なんだか全身から変な汗が出ている。
「何をしていたのか知らないが、この図体の大きさで固まられたままなのは面倒だ。私たちはここで雪也の寝顔でも眺めて写真を撮っているから、由弦はさっさと紫呉を向こうに連れて行ってくれ。固まらせたのは由弦なのだから、責任もって解凍くらいはしてもらわないと」
解凍? と首を傾げている間に、弥生はテーブルに深皿を置くと由弦の手を引いて先輩組のリビングに放り込んだ。あの細腕のどこにそんな力が? と驚いている間に、固まったままの紫呉もポイとリビングに放り込まれる。そして無情なまでに扉が閉められた。
ともだちにシェアしよう!

