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第93話

〝傍から見たら由弦にとって雪也は特別〟  周が由弦を見て、ハッキリと告げた言葉がずっと耳の奥にこだましている。  自分にとって、雪也は特別。今までそう思ったことは無かったけれど、記憶をたどれば否定できないことばかりが出てくる。  キスをしたいだとか、あるいは、セ、セックスしたいだとか、そういった欲を雪也に持つことは無かったけれど、大学で知り合って一目見た瞬間から、雪也は特別だったように思う。 (普通はそれを一目ぼれとか恋だとか言うんだろうけど、なんか違うんだよなぁ)  流石に提出期限が迫ってきているからと広げたテキストをボンヤリと眺める。  恋とか、愛とか、それだけが特別でないというのなら、由弦は大学生になって三回、一目で特別を感じたことになるだろう。  一つ目は雪也と出会った時。故郷にいる母とは違うけれど、なぜだか母のような、そんな最愛の家族に再会できたような感覚がした。  二つ目はサクラを見た時。力なく眠るその小さな身体を抱きしめた時、ようやく自分の半身を取り戻したと思った。  そして三つ目は紫呉。雪也やサクラの時とは違い、どう形容して良いかわからない、喜びとも安堵ともとれる感情が駆け巡った。〝紫呉〟その名を聞いた瞬間、笑顔を見た瞬間、満たされたような、同時に、彼の不幸を恐れるような、相反した感情がグチャグチャになって押し寄せてきた。

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