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第150話
(不幸……)
それは由弦が一番、恐れていたもの。どんなことをしても良い。何を諦めても構わない。そう思うほどに由弦は紫呉の幸せを願っていた。なのに、紫呉は今、自分を抱きしめながら感情を否定してくれるなと懇願している。勘違いされるのは、よほど不幸なことだと。
(じゃぁ、どうすれば良い)
胸の内で問いかける。すると脳裏に深々とため息を吐く周の姿が見えた。
そう、いつだって答えは単純明快なのだ。由弦が勝手に一人でグルグルと悩んで迷って苦しんでいただけで。
「雪也は特別だけど、特別じゃない?」
言葉足らずなその問いかけに、しかし紫呉は慣れたように由弦を抱く腕の力を強めた。
「ああ」
特別だけど、そういう特別じゃない。
「じゃぁ俺は、何にも諦めなくて良いのか?」
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