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第151話

 雪也は良い奴だからと、紫呉に幸せになって欲しいからと見ないフリをしたもの。  大学で可愛らしい女子生徒に囲まれているのを見た時、紫呉の眼差しが自分ではなく雪也に注がれているのを知った時、あの日、雪也に手を伸ばした紫呉を感じた時。  そこにあった感情を何と呼ぶのか。知らないフリをしただけで、認めようとしなかっただけで、本当は知っている。  本当は、知っているんだ。 「俺は、紫呉を好きでいて良いのか?」  あの時も、今も、これから先も。 「ああ。由弦が俺を好きでいてくれるなら、きっと俺は世界で一番の幸福を手にいれることができるだろう」  由弦が、幸福そのものなのだから。

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