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第157話
蒼が赤い物体を鍋の中に入れるのをなんとか阻止し、起きてきた雪也も並んで食卓に着く。大きな鍋を二つ、そして大量の唐揚げと餃子も並べれば、あとはお茶碗に白米を山盛りよそえば完成だ。〝いただきます〟と声を揃え、そして各々が箸をのばす。
「蒼……、それなに?」
湊が恐る恐る隣の皿を見つめる。蒼はキョトンとして首を傾げた。
「この前買った悪魔のペースト? っていうやつだよ〜。ハバネロとか唐辛子とか入ってるんだって。湊もいる?」
はい、どうぞ。と満面の笑みを浮かべる蒼に、引き攣った笑みを見せながらも視線を彷徨わせている湊。
「雪也、お肉は?」
「ん? おいおい食べるから大丈夫だよ。僕のことより、周もはやく取らないと無くなってしまうよ」
皆食べるの早いからね、と微笑む雪也に、全然食べていないじゃないかと不満そうな周。
「そういえば実家からリンゴが送られてきていたから、後で持ってこようか。弥生もリンゴは好きだからね」
「久しぶりにウサギの形にでも切るか?」
「その後あーんって食べさせてあげるよ」
豆腐の熱さを確認しながらも軽口を叩く優に、なぜが挑発的で妖艶な笑みを浮かべる弥生。
あの、尊くも短い日々で終わってしまったかけがえのない光景が目の前に広がっている。そして、隣には一番愛おしいと思った人が。
「食ったら新作のゲームでもやるか」
面白いのを友人に教えてもらったのだと言う紫呉に、由弦はニッと笑った。
「おう、勝負だな!」
穏やかで、いつも通りの光景。飛び交う柔らかな声と、そして笑い声。何一つ変わらない、優しく愛おしい空間。二人はテーブルの下でこっそりと手を握り、指を絡め合う。それを見透かすように、彼は楽しそうに笑った。
おわり
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
なんとか年内に紫呉×由弦を書き終わることができました。次も考えてはいるのですが、その前にこの二人のにゃんにゃんを書くか書くまいかを悩んでおります。いつも書いているので書くのも良いが、このおばかちゃんな二人は無い方が可愛いか? とかとか。次の二人に行く前に、そこらへんを考えますので、少々お待ちいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします!
残りあと三組! 先は長い(汗)
十時(如月皐)
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