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十三日『世界ラジオデー』

『明日はバレンタインデー、皆さまのチョコレートにまつわるエピソードをお待ちしています。さて、さっそくお便りをいただいたのはラジオネーム……』  バイトの休憩中。晴日は楽しそうに休憩室に流れるラジオを聞いていた。  ――チョコレートのエピソードかぁ……。  ふと小さいころの思い出が頭をよぎる。いつものようにおやつを握りしめて、信周の家に遊びに行ったあの日。その日のおやつはチョコレートで、信周に分けようとしたときには晴日の手の温もりでどろどろに溶けてしまっていた。半べそになりかけた晴日に、信周は言った。 『俺が魔法で戻してやるよ』 『えっ? ノブくん、まほうがつかえるの?』 『うん、ちょっと待ってて』  信周は晴日を連れてキッチンへ。チョコレートをぽいっと冷凍庫へ放り込んだ。 『一緒に十、数えて』 『うん。いーち、にーぃ、さーん……きゅーぅ、じゅうっ。……わあっ、戻ってる』  チョコレートは元の硬さに戻っていた。形はだいぶ変だったけれど。信周と一緒におやつを食べて、宿題をして、それから近くの公園にも行ったんだっけ……。   「ふふ」  晴日が思わず思い出し笑いをすると、同僚も同時に笑っていた。 「今のエピソード、面白かったよね」  どうやらラジオでも何か面白いエピソードが流れていたらしい。明日はバレンタインデー、店はきっと大忙しになる。

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