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二十一日『催眠術の日』
リビングではドラマが見たい信周と、かまって欲しい晴日の攻防戦が繰り広げられていた。やがて信周が根負けし、はあ、と小さなため息を吐いて腕を広げた。
「おいで」
晴日は大喜びで飛びつくと、とりとめもなく話し始める。ゼミの話、ゲームの話、ケーキの話。信周は相槌を打ちながら晴日の肩をなで続けること数分。
「……」
晴日はすうすうと寝息を立てていた。いつもそう、体をさすってやるとすぐに寝付くのだ。まるで催眠術にでもかかったかのように。
「よし、俺の勝ちだ」
寝かしつけに成功した信周は、晴日をベッドへ運ぶと一人悠悠とドラマを再生した。
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