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◆四月◆一日『エイプリルフール』
「ね、ノブくん、コンビニ寄ってこ?」
「おう、何買うの?」
「えっとね、なんかちょっとお腹すいちゃってぇ」
コンビニを指さす晴日を見て、信周のいたずら心がむくむくと頭をもたげる。信周は急に思い出した風を装って、「そういえば」と呟いた。
「今日って確かチキンが半額なんだよな」
「えっほんと? やったぁ」
目をキラキラさせて喜ぶ晴日に、少しだけ罪悪感。でも子どものような晴日がかわいくて、信周は思わずくすりと笑った。
「何笑ってるの?」
「嘘だよ、エイプリルフール」
「え、半額じゃないの……」
途端に晴日はしゅんとなる。いつの間にかコンビニの前だった。
「あ……」
俯いていた晴日が急に信周の顔をじっと見つめて立ち止まった。
「ノブくん鼻毛出てるよ」
「えっ、どこ?」
信周はパッと手で鼻を押さえた。次の瞬間。
「うっそだよーん、うへへへへ」
「やったな?」
「さっきのお返しだよーだ」
晴日は手を叩いて跳び上がった。追いかけてくる信周から逃げるように店内へ飛び込む。
ラッキーなことに、その日はなんとチキンが二十円引きだった。信周にチキンとオレンジジュースを買ってもらって、上機嫌な晴日であった。
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