176 / 368

二十四日『UFOキャッチャーの日』

 辞書を買いに書店へ来た晴日が買い物を終えると、信周はまだ入口のクレーンゲームコーナーにいた。駆け寄ろうとして、晴日は思わず立ち止まる。    信周が、最近はやりの小さなアニメグッズを小学生くらいの男の子に渡している。代わりに取ってあげたのだろうか。男の子がぱっと笑顔になり手を振って店を出て行ったのを見計らって、晴日は信周に声を掛けた。 「ノブくん、お待たせ」 「あ、ハル買い物終わった?」  信周はその声に振り返ると、手を差し出した。晴日がその手を握ると、信周は笑ってもう一方の手も差し出して、晴日の持っている辞書の入った袋を持った。 「腹減った。さっさとハンバーガー食いに行こうぜ」 「ん」  信周はいつも、こんなにも優しい。  

ともだちにシェアしよう!