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三十日『初恋の日』

「初恋は実らないなんて嘘だよねぇ。だってぇ、俺の初恋はノブくんだもん」  晴日が唐突に言って、笑いながら信周を見上げた。   「そうなの? 俺の初恋は小一のとき隣の席だった子だな」  信周は懐かしそうにそう言って、でもすぐに後悔した。晴日の表情が固まったのが見えたから。 「……で? ノブくんはどんな子が好きだったわけ?」 「いや、ほら、でもその子すぐに転校しちゃったし」  さっきまではあんなに上機嫌だったのに。拗ねたように唇を尖らせる晴日を、信周は慌てて抱きしめた。   「ハル、愛してるよ。今もこれからもずっとハルだけ」 「……許してあげるから、今日はずっとこうしてて」  晴日は信周の背中に腕を回すと、ぎゅっと力を込めた。

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