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◆十一月◆一日『諸聖人の日』
クローゼットの奥にしまっていた厚手の布団を引っ張り出そうとして、手前にあった箱をひっくり返してしまった。床に散らばる色んな種類のコスチューム。それと大人の……お・も・ちゃ。
「うぇ?」
付き合い始めて数年、信周は決して晴日に手を出そうとはしなかった。初めてキスをしたとき、唇が触れただけだったのに真っ赤になってあたふたする晴日を見て、大切にしようと心から思ったから。でもそんなこと知らない晴日は信周のことを勝手に聖人だと思い込んでいた。それが今や……。
――ノブくんがこんな変態だなんて知らなかった。
晴日は急いで散らばった物たちを拾い集める。
――でも俺、色んなの着るの楽しかったりするんだよね。ほらぁ、メイド服とか意外と似合っちゃったりするじゃん? あ、だけど写真はちょっと恥ずかしいなぁ……。
心の中で「ふふ」と笑いながら、晴日は何気なく手の中のボンテージハーネスを眺めた。あのときの信周は一段と変態だった、そんなことを思い出し、だんだん変な気分になっていく。
――嘘ぉ……俺もやばいじゃん、これ見ただけでこんなっ、なんでぇ……。
体は正直だ。尻がうずく。晴日は大急ぎで箱を元に戻すと、ベッドの上で出したばかりの布団を抱き締めた。
【参照◇六月十日『ところてんの日』】
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