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◆十二月◆一日『一万円札発行の日』
「あのね」と話し出した晴日の目はきらきらしていた。
「俺ね、今日バイトでお客さんに笑われちゃったの」
「ハル何したの?」
「あのね、これ」
笑われたというのに晴日はどうしてこんなに嬉しそうなのだろうか。いそいそと取り出して見せたのは。少しだけ絵柄の違う旧一万円札。
「偽札かと思ってびっくりしちゃって」
「へえ、珍しいね」
「でしょ? 珍しいから俺のと両替してもらったんだぁ」
ふふふと笑って、晴日は大事そうにお札をまた財布にしまう。晴日のことだからきっと使わずに大切に持ち続けるのだろう。
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