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四日『クッキーの日』
もう夜中に近いというのに、突然晴日が「クッキー食べたい」と言い出した。
「明日の帰りに買ってきてやるよ。俺も食べたいし」
「え、明日? やだ、今食べたいの」
「は? わがまま言うなよ」
面倒くさそうな信周に向かってむっと唇をとがらると、晴日はキッチンへ。
「粉と砂糖と、ええっとぉ……マーガリンでいっかぁ」
「適当、適当」と唱えながら、ばさばさとボウルにぶち込んで一塊に。丸めてぺちゃんこにしてオーブントースターへ入れると、いい香りに誘われて信周が覗きにやってきた。
「すっげえ、作ったの?」
「えへへ、もうすぐ焼けるよ。一緒に食べよ」
あっという間にでき上がった晴日の特製クッキーを一口。
「美味い、俺コーヒー淹れるわ。ハルも飲む?」
「じゃあ俺はカフェオレ」
「おっけ」
明日はいつも通り出勤だが……。
――ま、たまにはいっか。
美味しく焼けたクッキーを前に、晴日はとても嬉しそうだ。そんな晴日に勝てるはずがない。真夜中のコーヒータイムが始まった。
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