340 / 368

四日『クッキーの日』

 もう夜中に近いというのに、突然晴日が「クッキー食べたい」と言い出した。   「明日の帰りに買ってきてやるよ。俺も食べたいし」 「え、明日? やだ、今食べたいの」 「は? わがまま言うなよ」    面倒くさそうな信周に向かってむっと唇をとがらると、晴日はキッチンへ。 「粉と砂糖と、ええっとぉ……マーガリンでいっかぁ」  「適当、適当」と唱えながら、ばさばさとボウルにぶち込んで一塊に。丸めてぺちゃんこにしてオーブントースターへ入れると、いい香りに誘われて信周が覗きにやってきた。 「すっげえ、作ったの?」 「えへへ、もうすぐ焼けるよ。一緒に食べよ」  あっという間にでき上がった晴日の特製クッキーを一口。 「美味い、俺コーヒー淹れるわ。ハルも飲む?」 「じゃあ俺はカフェオレ」 「おっけ」  明日はいつも通り出勤だが……。  ――ま、たまにはいっか。  美味しく焼けたクッキーを前に、晴日はとても嬉しそうだ。そんな晴日に勝てるはずがない。真夜中のコーヒータイムが始まった。

ともだちにシェアしよう!