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第16話

 包家のリビングでは、煜瑾が恭安楽が作った一口サイズの可愛いプチシュークリームを美味しそうに頬張り、玄紀は包教授の手作りの、赤いナツメにお餅を詰めて、甘く煮た「糯米紅棗」という上海料理を、両手と口の周りをベタベタにしながら楽しそうに食べていた。 「文維お兄さまと小敏が、煜瑾ちゃんの大好きなイチゴを買って来てくれたら、お父さまが後でイチゴのタンフールーを作って下さるそうよ」 「ほんとうでしゅか!」 「パパ~!タンフー」  恭安楽の一言で、子供たちは目を輝かせて大喜びした。それを幸せそうに見守る、包夫妻だ。 「パイナップルと、バナナも用意してあるよ」 「きゃ~」「わ~」  子供たちは嬉しさの余り、声を上げ、互いに手を取り合い、幸せいっぱいの笑顔で、「父」と「母」を見た。 「あらあら、お手々もお顔もベタベタですよ。お兄さまたちがお戻りの前に、キレイにしておきましょうね」 「は~い」「あ~い」  お利口な小さな2人は、恭安楽と共にバスルームへと手を洗いに行った。 「帰りました~」  元気で明るい声を張り上げて、小敏が花束を抱えて玄関から入ってきた。  花に包まれた、見目麗しく、笑顔がチャーミングな美青年の登場に恭安楽は目を細めた。  その後ろから、たくさんの荷物を抱えた文維が現れた。 「文維おにいちゃま~」  その姿に、煜瑾が慌てて駆け付ける。 「お荷物、いっぱい!煜瑾が持ってあげましゅね」  大好きな文維の役に立ちたくて、その長い脚元に絡みつくようにする煜瑾だが、文維はかえって動きを封じられてしまう。 「いいですよ、煜瑾はお手伝いしなくても…」 「煜瑾が、文維おにいちゃまのお手ちゅだいしゅるの~」  思いやりいっぱいの、真剣な煜瑾に文維も困り果てた。 「煜瑾は、ボクのお手伝いはしてくれないの?」  それに気付いた小敏が、花束を叔母に預けると、さっと煜瑾を抱き上げた。 「いや~、小敏~!」  怒った煜瑾は、手足をバタつかせて抗議した。 「煜瑾は~、文維おにいちゃまのおてちゅだいが、したいのでしゅ~」 「やだ~、ボクだって、こんなカワイイ煜瑾と遊びたい~」 「うふふ…や~ん…」  小敏が上手に煜瑾の気を逸らし、ふざけている間に、文維はリビングを抜けて、荷物をキッチンに運ぶことに成功した。 「お父様?」  するとキッチンには、古い木製の椅子に座り、小さな玄紀を抱きかかえたまま、蜜柑を剥いている包教授が居た。 「パ~パ~」  蜜柑が待ち切れない玄紀は、包教授の腕を掴んで催促する。 「え?小さい玄紀は、オジサマ好きなの?」 「小敏!」  煜瑾の手を引いて現れた小敏は、とんでもなく意味深長な冗談を口にして文維にたしなめられた。文維にしてみれば、清純な煜瑾には聞かせたくなかったのだ。 「今の玄紀から見れば、小敏だって父親くらいの年齢ですよ」 「うっ…。痛いところを突くねえ」  小敏がそう言って笑うと、煜瑾もよく分からないままに微笑み、包教授の膝に駆け寄った。 「ねえ、おとうしゃま~。文維おにいちゃまが、イチゴを買って来て下さったら、タンフールーを作ってくだしゃるのでしょう?」  イチゴが大好きな煜瑾が、そう言うと、包教授はそうだったという顔をして、玄紀を膝から下ろそうとした。 「玄紀くん?」  だが玄紀は、包教授の肩にしっかりと掴まり、身じろぎもせず、ジッと小敏を見つめている。 「やだな~、玄紀ってば、こんなに小さくなっても、まだボクに見惚れちゃって」  そんな風に小敏がからかうと、玄紀の表情がパッと変わった。 「パパ~!」

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