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第51話

 文維の言葉に、煜瑾は感慨深い顔をして愛しい人を振り返った。 「…私も、文維と同じ味の料理を作れるようになるのでしょうか…」 「ええ、そうですよ。(ほう)家の味を、家族の一員である煜瑾にも覚えてもらえると嬉しいです」  煜瑾の言わんとすることを、聡明な文維は理解していた。煜瑾は「家族」の絆を、料理の味の共有で深めたいと思っているのだ。 「文維!」  嬉しそうな煜瑾に、文維も満足だ。 「私たちは、もう『家族』ですからね」  そう言って、文維は煜瑾を抱き寄せた。 「はい…」  煜瑾もまた、素直に文維に身を任せる。  お互いがお互いのことを想い、愛し合い、家族であると確信できた。それが嬉しくて、幸せで、2人は満ち足りた想いでいっぱいだった。 「コーヒーが、冷めてしまいましたね」 「淹れ替えますね」 「いいえ。アイスコーヒーも好きなんです」  文維と煜瑾は、顔を見合わせ、クスクスと笑った。 *** 「では、行ってきます」  セレブに愛されるエリートカウンセラーらしい、スマートなスーツ姿で、文維は玄関ドアの前で振り返った。その知的で凛々しい姿に、煜瑾もうっとりと見つめる。そして、ハッと気づいて文維の腕を掴んだ。 「あの…文維」 「はい、なんですか?」  文維の方は、いつものように悠然としていて、薄く頬を染める煜瑾に視線を向けた。それを受け、煜瑾は俯きながら、小さい声でお願いを1つした。 「今夜は、早く…帰って来て下さいね」  はにかみながら誘惑してくる恋人に、文維は好ましげな眼差しを注いだ。そのまま何も言わずにしっかりと抱き締める。  それが、文維の返事だった。 「文維…」 「煜瑾…」  2人は、濃密な口付けを交わす。それは言葉以上に雄弁なものだった。 「行ってきます」 「気をつけて!」  煜瑾の笑顔に、これが「夢」ではなく、「現実」であることが、文維は心から信じられた。  間もなく、春節。  新しい年がやって来る。  これから先、幾度となく新しい年を迎えることになっても、文維と煜瑾は変わることなく、互いを信じ合い、愛し合い、幸せに暮らしていくに違いなかった。 〈終劇〉 《荷蓮花だより》 思った以上に長い話になってしまいました(笑) 最後までお付き合い下さったアナタにお礼を申し上げます。 中国でお正月(春節)を迎える楽しさを描きたいと思い書き始めましたが、気持ちがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり…。とうとう「幼児化」のはずが、うやむやのまま終わってみたり…。 結局、私のお気に入りのチューリップCPである文維と煜瑾が幸せならそれでいいのです♪ 文維先生と煜瑾ちゃんを「カワイイ」って思っていただけたら、十分です。 最後までありがとうございました。

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