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53 side山 隣の推しは世界一

 体中の血が、下半身に集中している気がした。ヤバイ。ヤバイ。ヤバイ。  隠岐は可愛いし、可愛いし、可愛すぎる。ただでさえ可愛いのに、あちこち触ったせいで可愛くなってるし、行動が可愛すぎて心臓が持たない。  その隠岐を。  貫いた部分を見て、ごくりと喉を鳴らす。  挿入ってる。俺のが、隠岐の中に。 (マジで、挿入ってる)  ドッドッドッドと、心臓が壊れたみたいに鳴り響く。挿入しているだけで気持ち良い。正直、無理しているだろう隠岐を思うと、一切動かしてはマズいような気がするのに、メチャクチャに突き上げたくなるほどに興奮していた。 「っ、ん……榎井……っ」  切なげに名前を呼ばれ、理性が吹き飛びそうになる。慌てて身体を動かすと、中をグリっと抉ってしまった。 「ひぅっ!」  隠岐の細い腰が跳ねる。淫靡に捩れる身体に、むしゃぶりつきたくなる衝動を堪えた。 (ヤバイ。このままじゃ、隠岐を壊してしまう……)  ゼェゼェと息を吐きながら、ぐっと腕に力を入れて快感に耐える。本音を言えば、腰を掴んで揺さぶりたい。 (見えてるのが悪いっ)  可愛い姿が見えてるのが悪いんだ。見えなきゃいい。  そう思い、眼鏡を外してベッドフレームの上に置く。ぼんやりとした視界で、隠岐を見つめた。 「……ゆっくり、動くな」 「う、んっ……」  隠岐がどんな顔で俺を見ているのか、曖昧にしか分からないが、ぼーっとしているようだ。落ち着いている様子なので、ゆっくりと引き抜いてみる。 「ん――」 (ヤバ……、気持ち良い……)  隠岐の中は熱くて、ぐにぐにした腸壁に擦れて気持ちがいい。鈴口が引っ掛かるほどに引き抜き、またゆっくりと挿入する。何度かそれを繰り返しているうちに、慣れて来たのか、だんだんと挿入が楽になってくる。 (もう少し、早く……)  もう少し早く動かしても大丈夫そうだ。と、リズミカルに突き上げる。下から突きあげる度に身体を揺さぶられ、隠岐が甘い声を漏らした。 「あっ、あ、あっ、んっ……」 「隠岐……、隠岐っ……」  首筋にキスをしながら、ぬぷぬぷと貫く。だんだん我慢していたはずなのに加減が出来なくなって、貪るように抽挿を繰り返す。 「隠岐、隠岐っ……好きだ、隠岐っ……!」 「っあ、あ、榎井っ……俺もっ……、好きっ……!」  二人、名前を呼び合いながら、俺たちは同時に達したのだった。  ◆   ◆   ◆ 「……もう一回、キスして……」  脚を絡ませあってベッドに横になり、ねだられるままにキスをする。ちゅっとキスすると、隠岐は満足そうに笑って腕を絡めて来た。 「身体、大丈夫?」 「うん、思ったより平気」 「良かった……」  ホッとして息を吐く。隠岐がポーっとした顔で、俺を見上げる。 「ん?」 「榎井は、コンタクトにはしないの?」 「あー。まあ、面倒で……」 「俺、榎井の顔、好き」 「え」 「だから、眼鏡のままで良いよ」 「お、おう?」  良くわからんが、眼鏡のままで良いならそれで良いのだが。近くに寄らないとぼやけて見えないんだけどな。  そう言えば何だか流れでエッチしてしまったが、結果としては良かった。俺たちのことだから、あのままだったらエッチなしで過ごしてしまいそうだったし。 (こんなに可愛いのに、知らなかったら損だ)  なんなら、事後も可愛い。エッチのあとの隠岐は少し甘えて来て、なんだかすごく可愛いです。 (そう言えば) 「な、なあ、隠岐」 「ん?」 「……俺たち、付き合うってことで、良いんだよ……な?」  これで、「は? そんなつもりないけど?」とか言われたらどうしよう。ショックで死にそう。 「当たり前、だろっ」 「よ、良かった」  隠岐が怒ったように返事するのに、安堵して胸をなでおろす。マジで良かった。 「はは。可愛い恋人が出来て、嬉しい」 「俺だって……。俺、もし告白失敗したら、寮出るようだと思ってた」  隠岐の言葉に、驚いて目を見開く。 「まさか。隠岐がマリナちゃんじゃなかったとしても、断ったりしない」 「なにそれ変なの」 「マジ。こんなに可愛いのに、振るとか勿体ない」 「ばか」  恥ずかしがる様子が可愛いな、と思っていたら、バレたのか布団をかぶってしまった。仕方がないので俺も布団に潜ってぎゅっと抱きしめる。 「可愛い」 「もう、ばか」 (それにしても、隠岐ってばマリナちゃんでもあるんだよなあ)  世界一可愛いことを世界に知らしめたいのに、少しだけ、誰にも知られたくないと思ってしまった。独占欲は仕方がないが、マリナちゃんを思えば少し自重せねば。俺の恋人はマリナちゃんではなく、隠岐なんだから。 (その代わり、隠岐は俺だけのものだもんな)  そう思いながら、俺は恥ずかしがる隠岐の額にもう一度キスをした。

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