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おまけ 恋人にHな裏アカがバレた件

 それは、何気ないいつもの午後だった。俺はラウンジにコーヒーを取りに行って部屋を出ていた。隠岐と一緒に行くこともあるが、俺が隠岐の分も取りに行くこともある。今日の場合は後者だ。つまり、隠岐を部屋に置いていっていた。  恋人になって、大抵の時間を二人で過ごすようになった俺たちは、多くの時間を俺の部屋で過ごした。隠岐の部屋は機材があるし、万が一放送を切っていなかったなんて事故を起こしたら、マジでシャレにならない可能性があるからだ。だから、俺の部屋で過ごすことが多い。  俺の部屋にはイチャイチャするためのベッドも、クッションも、二人で遊ぶゲームもアニメDVDも、漫画もある。おおよそ不足はない。ついでに、見られてマズいものもない。  そう、思っていたのだが――。  部屋に帰って、マグカップを手に室内を覗き込む。いつもなら入り口に迎えに顔を出す隠岐が、今日に限って顔を出さなかった。 「隠岐? コーヒー持ってきた――」  部屋に入り、パソコンの前で固まっている隠岐を見る。何事かと思って顔を見ると、隠岐はゆでだこみたいに真っ赤だった。 「あっ、そのっ……」 「?」  パソコンの中にも、見られてマズいものはない。作業環境でもあるので、お互いに見るのは構わないと言う考えだ。もちろん、ちょっとエッチな同人誌なんかがあったりはするのだが、フォルダの階層の奥深くだし、隠岐だってそこまで深くは覗かない。まあ、見られたところで痛くも痒くもない。  痛くも痒くも――。 「あ?」  隠岐が見ていた画面を見て、顔を顰める。  あれ? 何見てるんだ?  嫌な予感と、同時にサッと血の気が引く。  いや、マズい。なんで、その画面っ……! 「あっ、ご、ごめん、なんか……その」  隠岐が見ていたもの――俺の、裏アカである。R18なイラストを描いては投げている、エッチな裏アカだ。アカウントを切り替え忘れていたらしく、起動したらその画面になっていたらしい。死んだ。 「こっ! これはっ! 違うんだっ!」  慌てて画面の前に立ちふさがるが、ハッキリ言って遅すぎる。見られた。そりゃ、ばっちり。  エッチな感じの、マリナちゃんのイラストが。なんなら、マリナちゃんに飽き足らずナギのもあったりする。俺の性癖よ。 「榎井……」  隠岐が真っ赤な顔で頬を膨らませる。ゴメン、マジで。 「すみませんでした」  反射的に土下座する俺に、隠岐がぷんっと唇を尖らせる。怒ってる顔、可愛いな。 「もー、ダメだよ! 榎井はもう公式なんだから!」 「はい。反省してます」 「それで……」  ああ。怒られてしまった。そりゃそうだ。俺ってばナギの公式絵師なんだもの。しょぼんとしていると、隠岐が俺の服の裾を控えめに引っ張った。 「榎井は、ああいうこと、して欲しいの……?」  恥ずかしそうに問いかける隠岐に、何かがぷつんと切れる音がした。多分、理性の糸。  そのまま俺が驚いてもがく隠岐を抱きかかえて、ベッドに直行したのは言うまでもない。

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