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第3話 僕のお兄ちゃん
「…理玖、お前また俺のベッドに夜中入ってきたのか?」
涼兄のお日様みたいな匂いのベッドは、僕をとっても安心させる。だから夜中に怖い夢を見てドキドキしちゃった時は、涼兄のベッドに潜り込んじゃうんだ。
僕は掛け布団から目だけ出して、涼兄の様子を伺った。涼兄は諦めたように僕の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜると、先にベッドから降りてシャワーを浴びに行った。僕はこれ幸いと二度寝しようと思ったけど、一度部屋を出て行った涼兄がドアから顔を覗かせてひと言言い放った。
「二度寝したら、もう俺のベッドに来るの禁止。」
僕は涼兄が消えて行ったドアを見つめて渋々ベッドから降りると、お気に入りの恐竜スリッパに足を突っ込んでポテポテと自分の部屋に向かった。
涼兄の部屋から出たところで、ばったり慧兄と出くわした。彗兄は僕が出てきた部屋を確認すると、僕の頭を撫でて言った。
「理玖、また涼介の部屋で眠ったのか?来年は小学校に上がるんだから、もう自分の部屋で朝まで寝ないとダメだぞ?」
僕はじっと慧兄を見つめると、思い切って尋ねた。
「…もし怖い夢を見たら、けいにーにはどうやって眠るの?」
彗兄は、もう一度僕の頭を優しく撫でて言った。
「…怖い夢を見たのか?そう言えば僕も理玖ぐらいの頃は、怖い夢を見てた気がするな。そんな時は昼間にいっぱい身体を動かして遊ぶんだ。朝まで夢を見る暇がないくらいぐっすり眠れるぞ?」
僕は彗兄の優しい顔を見上げて、にっこり笑うと自分の部屋へ着替えに行った。にーにたちは子供部屋の先の僕たち専用のシャワーブースで毎朝シャワーも浴びる。僕は夜ゆっくりお風呂派だから、朝は歯磨きだけ。
着替えてファミリールームへいくと、野村さんがニコニコして迎えてくれた。ママとパパはもう食べ終わって、コーヒーを飲んでる。
「おはようございます。パパ、ママ、野村さん。」
パパは僕が椅子に座るのを優しく見守ると微笑んで言った。
「おはよう、理玖。さっき、彗が理玖には運動が足りないって言ってたけど、今日スポーツクラブに行きたいかい?」
もう先に食べ始めている彗兄が、僕にウインクした。僕は彗兄の言う事も効果があるかもしれないと思って、パパににっこり笑って言った。
「うん。僕、今日は沢山運動したい。」
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