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第17話 大人になる

朝目が覚めて、僕は一瞬漏らしてしまったかと思った。でも慌ててなぞったシーツはからりとしていて、僕はもしかしてと恐る恐るパンツの中を覗き込んだ。案の定、何かべったりしたものがパンツに付いていた。 これは…、噂のやつだ。 僕は慌てて僕たち専用のシャワーブースに入って、そこで下着を脱いでシャワーを浴びた。そうか、兄さん達が朝からシャワーを浴びていたのは、夢精のせいだったんだな…。僕は妙な納得をして、びしょ濡れになった足元のパンツをささっと手で洗うと洗濯籠へ放り込んだ。 珍しく朝から起きてきた彗兄が、僕と交代でシャワーを浴びに来た。彗兄は僕をチラッと見るとニヤリと笑って言った。 「おめでとう。今夜は野村さんに赤飯炊いてもらおうな。」 そう言って面白そうに笑いながらシャワーブースに入って行った。僕は彗兄に初めての夢精がバレた事に動揺しながら、でもみんな通る道なんだからお祝いしてもらうのも良いかもと思った。なんてね。 僕がそんな馬鹿な事を考えたバチが当たったのか、その日の夕方に赤飯が出てきた。僕はじわじわ顔が熱くなったけど、これ以上辱めを受けるのはごめんだと、ニヤつく涼兄の顔を睨みながら食べ続けた。その時母さんが涼兄に尋ねた話の内容に僕は箸を止めた。 「そう言えば昨日遅くに篤哉君が遊びに来てたみたいだけど、いつ帰ったの?」 僕はパッと顔を上げて、涼兄の顔を見つめた。あっくんが来てたの?涼兄は僕の方を見ないで母さんに答えた。 「…ああ、あいつは部活の朝練あるとか言って朝早くに帰ってったよ。昨日はゲームやってて遅くなったから泊まっていったんだ。」 夕食後、僕は涼兄の部屋を訪ねた。涼兄は勉強していた手を止めて僕に向き直った。 「珍しいな。なんだ?」 僕は思い切って言った。 「…昨日、あっくん来てたの?」 涼兄はニヤリと笑って僕に言った。 「理玖は相変わらずあっくん、あっくんだな。ああ、何か急に押しかけてきたんだ。何か気になる事でもあったみたいだ。」 僕は涼兄の前だったけど、最近あんまりにもあっくんに会って無いせいで思わず口を尖らせて言った。 「…僕も会いたかったのに。起こしてくれたら会えたのに。」 涼兄は机に向き直ると、もう話は終わりだというように背中を見せながら言った。 「…会えなかった?夜中に理玖の寝顔見に行くって、ちょっと外してたけど。」

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