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第24話 僕のお仕事
僕は挨拶してくれた三年生の大人っぽさに見惚れていたけれど、吉良君に突かれて慌てて頭を下げて挨拶した。風間さんと榊さんは知り合いらしく、気の置けないやりとりをしているのが見て取れた。
中学部は先輩、後輩という枠組みが出来るのかと、僕が密かにワクワクしたのもしょうがないだろう?兄達のいる僕にしてみれば、どちらかと言うと後輩の方が欲しいけど。まだ僕はペーペーだ。
僕はそんな呑気なことを考えていて、周囲の生徒達からチラチラ見られていたなんて全然気が付かなかったんだ。相変わらず何を考えているかわからない顰めっ面の吉良君と、寡黙な風間先輩、しっかり者の榊先輩。僕の一ヶ月はこうして始まった。
僕は副リーダーだったけど、ほとんど何もする事が無かった。吉良君の仕切りが完璧で、僕は側にいてクラスメイトを呼んだりする号令役だ。
吉良君は相変わらず難しい顔をしながらボソッと呟いた。
「思った通り、三好が呼べば直ぐにみんなが来るから楽でいいや。」
いつの間にか素が出たのか、吉良君は僕を呼び捨てにしていて、何だか柄も悪くなっていた。僕はクスクス笑って言った。
「吉良君は随分最初と印象が違うね。僕すっかり騙されてたみたい。」
吉良君は少し黙って僕を見つめていたけれど、急にそっぽを向いて尋ねてきた。
「なぁ、三好って誰かと、その…。」
丁度その時、榊先輩が僕たちの教室に現れて僕らを手招きした。僕は話が途中だった吉良の顔を見たけど、吉良は何でもないと言って立ち上がった。
榊先輩の用はバース判定結果が届いているはずだから、順番に受け取るためにドクターの所まで皆を連れて行くようにとの事だった。
判定結果が出たらそのまま帰れるとかで、僕たち新入生は大事なバースの判定が出ると言う事もあって、落ち着かない気分でソワソワしていた。吉良の号令で帰り支度を終えた僕たちは、先輩に連れられて見知らぬ別棟へ連れて行かれた。
僕の前を歩いていた榊先輩は、僕の側に近寄ると尋ねてきた。
「…その、三好は大体予想はついてるのか?」
なぜか隣の吉良君も、僕の答えを待ってるみたいだった。
「…んー?どうでしょうか。僕は自分がどんなバースでもいいんです。最近“約束”した相手が、僕のバースは関係ないって言ってくれたんで。」
僕はみんなバースの話が好きなんだなと思って、ちょっと浮かれていた事もあり、考えなしに言わなくても良い事まで言ってしまった事に全く気がつかなかった。
吉良君と榊先輩のびっくりした顔と、後ろを歩いていたクラスメイト達の悲鳴のような騒めきが一斉に響き渡った。え?何?
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