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第28話 吉良side三好理玖という生命体
程よい緊張感と、希望を胸に俺は英明学園中学部の入学式のために指定された席に座った。近くの席の物おじしない生徒が、知り合いらしき生徒とヒソヒソと話してるのを聞くともなしに聞いていた。
「俺たち多分、理玖と一緒のクラスだ。前の方に理玖座ってるだろ?この二列が多分同じクラスだから。やばい、ついてるよな?」
「ああ、しかも悠太郎は違うクラスの列だし。あいつがいると邪魔されるだろ?まぁ、みことは一緒だけど、悠太郎みたいに邪魔はしないから。」
俺は二人の会話の中の理玖という生徒が人気なのかなと思った。多分こいつらは内部進学組なんだろう。慣れた感じが俺のような中学部からの入学組とは明らかに違っている。
俺がジロジロ見てたせいか、そいつらはよろしくと挨拶してくれた。名門だけあって、育ちの良さそうな奴らだな。
それから直ぐに式は始まって、俺は理玖という名前の生徒のことはすっかり忘れてしまっていた。式が終わって、手元の冊子に添った説明会が終わってやれやれと立ち上がった時だった。
前の方から小さな騒めきが起こって、俺はこちらへやって来る一人の学生に目を奪われた。その生徒は周囲より少し小柄なのに、手足が長いのかバランスの取れた身体が目を引いた。そしてきらめく瞳と繊細な顔を、スッキリした襟足と柔らかそうな茶色い髪が彩っていた。
何ていうか、可愛い?いや、綺麗?目を奪うというのはこのことかもしれない。英明学園は親も金持ちが多いのでα率も高いし、反対に番から生まれたΩも他より多い。
目の前の美しい男はΩだろうか?いや、でもΩにありがちな変に弱々しい感じが全くない。どちらかと言うと、振る舞いはほとんどαにしか見えない。今も隣のいかにもαっぽい男と馬鹿みたいに笑っている。俺は直ぐにこの綺麗な男が理玖という奴だと分かったんだ。
暫定クラスのリーダーを決めるホームルームで、俺はリーダーに立候補した。それは前からそうしようと思っていたんだが、壇上に立った瞬間、俺は無意識にクラスに入った時から盗み見ていた三好理玖を副リーダーに指名した。
俺は三好理玖に近づくために、先手必勝の手を打ったんだ。しかし、三好を見る度に顔が緩まないように、歯を食いしばる羽目になった。そして気の置けない、知れば知るほど好きになってしまうこの綺麗な男には、クラスの誰も太刀打ち出来ない約束の男が居るって事も、それから幾日も経たないうちに発覚した。
俺の淡い恋は桜のように短くも儚く散ってしまった。それが俺だけじゃなかったのが、救いと言えば救いだろうか。
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