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第29話 ★約束期間★ 悠太郎のお叱り
「まったく、理玖は呑気すぎやしないか?」
僕は前以上に小煩くなった悠太郎に顰めっ面を見せつけると、尊の肩に寄りかかって言った。
「みことー、悠太郎がぁ、うるさいんですけどー。」
尊はニヤニヤしながら、僕たちを見比べて俺の肩を抱いて言った。
「悠太郎、もう理玖はパートナーが居るんだから、そんなにピリピリしなくても良いんじゃないのか?」
すると悠太郎は僕たちに顔を寄せると、小声で言った。
「俺聞いたんだ。ひとつ上の真壁先輩知ってる?あの人が急にヒートになっちゃって、それがたまたま部活中だったもんだから、結構ヤバかったらしくって。いくら俺たちが抑制剤飲んでても、ヒートに出くわしたら、押さえきれないみたいだ。
理玖も最近急に背が伸びただろ?来年は中3なんだし、突然ヒートが来るかもしれない。だからちゃんとネックガードをつけた方が良いよ。俺たちだって、発情した理玖に噛み付いて友情を壊したくないし…。」
流石にその一言は僕にも響いた。僕は悠太郎と尊の首に手を回すと微笑んで言った。
「分かった。明日からちゃんと付けるから。な?それで良いだろ?」
尊が呆れたように僕に言った。
「何だ、持ってるならサッサとつければ良いのに。学校以外でつけてるのか?」
僕は、二人から目を逸らして気まずい思いで言った。
「…あー、あっくんと会う時とか?最近確かに僕ヤバくて。あっくんと一緒に居ると…、ね?」
二人は顔を見合わせると、ミコトが叫んだ。
「わー!ここに不純異性交遊してる人がいるっ!」
焦った僕と悠太郎はミコトの口を塞いで罵ると、周囲を見回して声を潜めた。
「馬鹿っ!迂闊な事言うなよ。誤解されるだろ?ただでさえ僕は色々言われてるってのに。やってない!やってないって!あっくんはちゃんと父さんとの約束守ってるから!」
尊は片眉を上げて、肩をすくめた。
「ああ、例の10ヶ条?でも三好のおじさんも厳しいよな?だってあっくん18歳だろ?まぁ、理玖がお子ちゃまだからしょうがないのか。じゃあどっちかというと、理玖のヒートが早い方がハッピーなわけ?」
僕の代わりに悠太郎が尊にゲンコツを落とすと、お前は時と場所を考えてものを言えって怒ってくれた。そうだ、そうだ。僕はミコトと悠太郎のやりとりを見ながらゲラゲラ笑っていたけど、実際最近ヤバいかなと思い始めている。
今日もあっくんに会うんだけど、ちょっとドキドキだ。
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