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第33話 篤哉side誘惑するのは
理玖は恥ずかしそうに濡れちゃうと言った。それっていわゆるΩ特有のあれだろうか。いや、それしかないだろ。でも、俺が今まで相手したΩは最初のヒート経験後の男や女だったから、ヒート以前の理玖のような場合の彼らが、どんな第二次性徴期を迎えるかは詳しくない。
理玖の困った不安そうな様子を見て、俺はスマホを取り出して友人に電話した。仲良くしているクラスメイトが男同士のαとΩのカップルで、時々そいつらに理玖への気遣いとかを教えてもらっているんだ。
「あ、楠木?ちょっと聞きたい事があるんだけど今大丈夫?隣に清水もいる?…ちょっとΩ関連で教えてほしいんだけど。あの、ヒート前、14歳ぐらいって、その、たまに後ろの方濡れたりするものなの?
いや、真剣なんだって。お前達しか聞ける相手いないし。頼むよ。…ああ。…そう。分かった。言いにくい事教えてくれてどうもありがとう。…はい。すみません。…じゃ。」
俺の胸に寄りかかって、手持ち無沙汰に俺のシャツのボタンを開けたり、閉めたりしていた理玖が電話を終えた俺をチラッと仰ぎ見た。恥ずかしそうに頬を染める理玖が可愛いんですけど…。
「理玖はΩバースの教本はもう見た?載ってなかったんだろう?Ωの清水がそこまでは載ってないから、やっぱりドクターか先輩に聞くしかなかったって。」
理玖は俺に抱きついて顔を胸元にうずめて聞いた。
「…清水さん、なんて言ってた?」
俺は腕の中の理玖の顔を覗き込まないようにして話した。
「清水は中3でヒートが来たらしいけど、一年位前から時々濡れる事があったって。あー、イチャイチャしてる時とか?普段は全然らしいよ。だから理玖はΩとして正常に、ちゃんと成長してるってことだと思うよ?」
理玖は俯いていた顔を上げて、ホッとしたように俺を見上げた。俺は何だか全幅の信頼を理玖に与えられてる気がして心の中が温かいもので満たされる気がした。理玖の滑らかな頬から首筋を撫で下ろすと、理玖は少しビクリと震えて、目を閉じた。
長いまつ毛が頬に影を落とす、その美しい造形を見つめていると、人より赤い唇が開いて甘い理玖の声が聞こえた。
「…あっくん、じゃあ…いつもより進んでもいいんでしょ?僕の身体、成長したんでしょ?」
そう言いながらゆっくり瞼を持ち上げた理玖は、何だかいつもの子供っぽい理玖じゃないみたいだった。
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