44 / 122

第44話 篤哉side不穏な噂話

 「まぁ、別に取り立てて言うほどの事でもないんだけど、ちょっと気になったって言うか。篤哉と涼介に関係する話かも知れないなと思ってさ。」  そう言いながら俺たちを見回して壱太が声を潜めた。 「大学生限定のシークレットラバーって知ってる?結構秘密裏に流行っててさ。別にお金が発生する訳じゃないし、まぁ気軽な出会いって感じで。ジャンルも色々あってね。結構特殊な性癖にも対応してる訳。  そこ使った知り合いが居たんだけど、どうもそのシークレットラバーが名乗ったのが、その、ミヨシ リクって言ったらしくて。俺も聞いた時にびっくりして、どんな見かけか聞いたら勿論理玖くんとは違うんだけど。  でもちょっと悪意あるだろ?お前たちも知っておいた方がいいかと思ってさ。」  俺は話を聞いてるうちに胸がムカムカして来た。明らかに理玖を騙ってるやつの仕業だけれど、そんな事理玖が知ったらどう思うか。理玖の耳には入らないだろうけど、万が一って事もある。あんな純粋で無垢な理玖が、シークレットラバーの爛れた男に汚されたようで怒りが湧いて来た。  俺以上に怒りで顔を心なしか青褪めさせている涼介は、殊更冷たい口調で壱太に尋ねた。 「…その偽のリクと知人が関係したジャンルは何だった?」  涼介がこんな風に冷え冷えとするのは、久しぶりだった。壱太は蓮に助けを求める様な視線を送ると、ため息を吐いて言った。 「俺が関係した訳じゃないからな?あくまで俺の知り合いの話だから。  …そいつはマゾっ気のある奴らしくて、軽いSMプレイ系のシークレットラバーらしい。その「ミヨシ リク」は前からそのジャンルじゃ人気で、ずっとQって名乗ってたのに急にそいつに名前教えたらしくて。  そいつもミヨシって聞いて、あれ?って思ったんだって。て言うのも、涼介の弟って有名だろ?年の頃も大学生ぐらいのフリしてるけど、身体がもっと幼い気がするって思ってたらしくて。  それで今回俺に話持って来たって訳。お前たちに直接言う勇気はなかったみたいだな。」  すっかり青筋を立ててる涼介の腕を蓮が掴んで押さえてるのを眺めながら、俺はゆっくり立ち上がった。 「…そいつに会うしかなくない?何で理玖の名前騙ってんのって。」 「だな。」  そう俺に同意して、人を殺しそうな顔をした涼介と俺を眺めた蓮は壱太に肩をすくめて見せると、一緒に立ち上がって言った。 「こうなったら、その知人に直接聞きに行くしかないよ。こいつらこうなったら止めらんないし。行こ。」

ともだちにシェアしよう!