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第59話 婚約前と後

 僕はネットニュースを指でスライドさせながら、あっくんに寄り掛かってモバイルを見つめていた。 「あっくん、僕たちの写真公開したの?」  そこには結納の時にホテルの庭園で二人で撮った写真が載っていた。いつの間に撮っていたのか僕は気づかなかったけれど、プロが撮った二人が仲良さげに笑いあっている写真だった。 「ああ、それ良いだろ?俺のお気に入りなんだ。もっとくっついた良い写真もあったんだけど、それだと理玖に横恋慕する奴が増えそうだから無難なやつにしたんだ。そっちの写真は今度プレゼントするよ。」  そう言って、僕の耳の下にチュっとキスをすると、あっくんはモバイルを指で動かした。 「ほら、これ見た?理玖がめっちゃ可愛いってもう噂になってる。世の中に理玖の可愛さがバレる前に俺のものになって、本当に良かったよ。」  僕はあっくんの顔を見上げて言った。 「僕もあっくんが他の人のものにならなくて、良かった。…僕、何でこんなに昔からあっくんの事が好きなんだろう。それって不思議なくらいだよね?」  あっくんは僕をじっと何か考え込む様に見下ろすと、少し躊躇いがちに僕に尋ねた。 「理玖は俺のこと好いてくれてるのは知ってるけど、それってどんな感じなのかな。んーと、たとえば俺は理玖の事を誰にも渡したくないし、どろどろに身も心も愛したいし、一生好きでいる自信があるんだ。  それって、もう多分理玖が小さい頃から漠然と感じてきた事で、その頃は俺って異常なのかなって自分でも心配になるくらいだったんだよ。理玖の首の匂いが凄い良い匂いで、幸せ感じるし、その、性的にも興奮するし…。  運命の番なんて今じゃ都市伝説だけど、そうなんじゃないかなって考えることあるんだ。だから理玖が本当のところ俺をどう感じるのか聞きたいっていうか…。」  そう言ったあっくんはいつもより真剣な眼差しで僕を見つめた。僕はあっくんの気持ちを聞いて、只々感動したというか僕たちって婚約前に肝心な愛を告白してないんじゃないかって、気づいてしまった。  僕は身体を起こすと、モバイルをテーブルに置いた。そしてソファに寄りかかるあっくんに向き直った。僕はドキドキと緊張してきたけれど、真っ直ぐにあっくんの瞳を見つめて言った。 「あっくん、僕初めてあっくんの本当の気持ち聞いた気がする。僕たちいつも一緒にイチャイチャしてばかりで、本当の気持ち伝え合ってなかったのかもしれないね…。今更かもしれないけど、僕の気持ち聞いてくれる?」

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