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第70話 僕の幼い愛
僕は爛れた気分でぐったりと疲れ切っているにも関わらず、何だかやばい薬でも飲んだかの様な冴えた感覚を感じていた。僕を突き上げるあっくんの匂いや、肌に触れる汗が、僕を堪らなく愛しい気持ちにさせて、僕は今死んでしまっても後悔はないと思ってしまっていた。
僕はまだ人生経験は15年で、ほんのヒヨッコだけれど、それでもはっきり分かっていることはあった。僕の命はあっくんに握られているってこと。
Ωは番のアルファに捨てられたら、一生他のアルファと交わることも出来ず、ヒートの度にのたうち回って苦しんで生きていくと昔の小説で読んだ事がある。
今は昔ほどの事は無くなったみたいだけど、それでも苦しみはあるだろう。結局Ωはアルファに生存権を握られているんだ、昔も、今も。
でも僕はアルファの番であるあっくんに万が一捨てられたとしても、恨む事はないとわかっている。僕にくれたあっくんの愛は二度とあっくんに会えなくなったとしても、僕を支えてくれるだろう。
僕が海の底に沈むとしても、僕は両手に今日くれたあっくんの愛を抱きしめて、朽ち果てていくだろう。たぶん口元には微笑みを浮かべて。
僕は喘ぎながら、どこか俯瞰した感覚の中、そんなことを感じていたんだ。僕が流す涙にあっくんはハッとして、僕に入ったまま顔を覗き込んで言った。
「…理玖、どうした?」
僕はあっくんを締め付けてしまうのを感じながら、あっくんの頬に手を伸ばして愛を強請った。
「もっと、もっとあっくんを僕にちょうだい…。僕が要らないって言うまで、あっくんでいっぱいにして。」
僕の幼い愛は、未熟だけど純粋で、真っ直ぐだった。僕は只々あっくんと溶け合いたかった。そして、それが永遠に続く様に願った。あっくんは苦しげに僕を見つめると言った。
「理玖、理玖っ、愛してる…。俺はこんな気持ち経験したことがないんだ。俺たちは二度と離れない。俺は理玖のもので、理玖は俺のものだ。それだけ。大事なことはそれだけだ。」
僕は首を伸ばしてあっくんに吸い付く様に口付けると囁いた。
「…分かった。あっくんは僕のもの、僕はあっくんのもの。…僕のたったひとつの愛は、あっくんにあげるよ。」
あっくんは僕をやっぱり苦しげに見つめると、瞼から涙を僕の頬に落として、貪る様
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