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第122話 修学旅行 【完】

 「ふーっ、気持ち良い場所だね、ここ。普通の旅行で来るにはちょっと難ありだから、学校の集団旅行で来るには安心だし、良かったかも。」  僕がそう言うと、尊と悠太郎も目を閉じて砂浜に横たわってボンヤリとした返事をくれた。 「まぁね。でも俺はグラマラスな美女がドリンクを差し出してくれても全然良いんだけど。ところで、水はどこで飲める訳?」  僕たちはゆっくり起き上がって、周囲を見回した。数人が同じように砂浜に転がっているけど、誰も動こうとしない。それもそうだ。僕たちは疲労困憊なんだからね。  結局僕は、あっくんが参加したという、サバイバル離島ツアーの修学旅行に参加した。1日目はハードな無人島でのサバイバルだけど、残りの1週間は高級リゾートで過ごす事が出来る。  まるで飴と鞭だなと僕は苦笑すると、目の前の砂浜を見つめた。僕がこのツアーに参加したかった理由は、同じ場所での貝拾いだ。今度は僕があっくんにお土産を拾いたかったんだ。  尊と悠太郎には話してないけど、何となくバレてる気がする。そういえば、あのお土産をもらった時、あっくんの修学旅行の話をしたもんね。  でも特に反対もせずに、僕と同じ修学旅行を選んでくれたのは熱い友情を感じるなぁ。ふふふ。 「ほら、笑ってないで貝でも拾ってこいよ。これから水探したり、寝るところ確保しなくちゃだからハードだぞ?」  そう悠太郎が笑いながら言うから、僕は一人立ち上がって、水際まで歩いて行った。  キラキラした海の輝きと、足元のちょっと不安さえ覚える不安定さは、僕に事故直前に行ったあの日の海を思い出させた。あれから本当に色々あったな。  僕は手をかざして重ねた指の下から明るい日差しを見上げた。  クラクラするくらい眩しい南の島の日差しが、まるで僕の進む人生を象徴してるような気がして、僕は思わず大きな声で叫んだんだ。 「しあわせだー!三好理玖は生きてるぞー!」  後ろから、ザクザクと近づいてくる二人の足音に振り向くと、尊が呆れた顔で僕の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜると言った。 「恥ずかしい奴。大体、そんな誰でも知ってる事叫ぶなよ。お前はいつでも幸せいっぱいだし、あんな大事故に遭っても、太々しく生きてるんだから。」  悠太郎も僕の隣に立って僕を見下ろして言った。 「ほんとそれ。儚げな顔して、一番図太いのは理玖だからな。」  僕たちは顔を見合わせて、我慢できずに笑った。僕たちはこれからまだ色々な人生の試練があるだろうけど、それはこうやって笑って吹き飛ばそう。  僕の愛するあっくんと、大事な家族と、腐れ縁のこいつらが居たら、何も不安はないよ。僕はいつもご機嫌で生きていくんだ。波間に消える僕たちの笑い声を聞きながら、そんな事を思った。  ***** 完 *****  これで完結といたします♡  まだまだ話は広がりそうですが、それは番外編が書きたくなったらそちらで書こうと思います。  結局、122話、123000文字ほどの長編になってしまったこの作品ですが、オメガバースの要素を含んだ初めてのものとしては楽しく甘々しく書けたと思います。  途中自分でも予想外の展開にノリノリでしたが笑、最後まで書けてホッとしています!  この作品のスピンオフである『三好家の次男はいつも苦労性』も完結済みですので一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです😊

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