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第2話 好きだと気づいたところで(4)

「おい、痛いって!」 「………………」  明が怒っているのは、表情からはっきりと見て取れた。  知られたくないだろうプライベートな現場を、近しい人物に見られてしまったのだから当然だろう。彼の気持ちを考えれば、申し訳なさでどうしようもなく胸がいっぱいになる。 「……ごめん。どうしても明のことが気になって、後つけてたんだ」  正直に謝ったら、明のため息が返ってきた。 「それだけか?」 「それだけって」 「さっきの男は?」 「あれは他のヤツと勘違いされただけだっての! つーかさ、お前だって!」  勢いづいて口にしそうになったことを、慌てて押し止める。軽率に踏み込んでいい事情ではない気がした。  しかし、言わずとも察したようで、明は静かに口を開くのだった。 「俺だって……単なるその場限りの相手だよ」 「マジ、か」  はっきり言われて、思わず言葉に詰まってしまう。あの男は想いを寄せている相手ではなかったらしいが、どちらにせよショックなことには変わりない。  いつだって一緒にいたはずなのに――いつの間にか自分だけ置いていかれたようで、どうにもならない寂しさが込み上げてくる。 「引いたか?」 「え?」  突然の問いかけに鈍く反応することしかできなかった。対する明は、眉をひそめて言葉を加える。 「男同士でこんなことしてるだなんて、気持ち悪ィだろ」 「あ、いや別にいいとは思うけどっ、やっぱお前の好きな相手ってのも……?」  中途半端な言い方になってしまったが、明は確かに頷いた。もうここまできたら、新たに驚くこともない。 (……必然的にそうなっちまうよな)  冗談めかして告白してきたのだって、もしかしたら、同性に告白されたらどんな反応をするか見たかったところがあったのかもしれない。きっと同性愛というハードルの高さに、踏み出すに踏み出せないのだろう。 「だけど、普段から周りをそういった目で見てるワケじゃねえし、変に意識しないでもらえると助かる」  明が俯きながら告げる。そんなの考えるまでもなかった。

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