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第2話 好きだと気づいたところで(5)
「バッ、当たり前だろ!? 俺とお前の仲じゃんか!」
「だよな――サンキュ」
声音に安堵が滲んでいた。自惚れでないならば、今まで築き上げてきた関係性が崩れないことへの安堵に違いない。
幼馴染みとして大切に思ってくれている――嬉しいはずなのに、同時に切なくもあって何とも言えない気持ちになる。
(マジで複雑すぎだろ)
また堂々巡りの考えがよぎりそうになって、軽く頭を振った。これ以上考えては駄目だ、と話の方向性を変えることにする。
「ンなことよりさ、そもそも高校生でラブホとか常識的に考えて駄目じゃね? 補導されかねないしやめろよ……俺だって、お前がそーゆーのしてるのヤだし」
さすがにこれだけは伝えておきたくて、咎めるように口にした。
建前はあるものの、ほとんど私情だ。誰とも知らぬ相手と不純な関係を持たないでほしい――ただのワガママにすぎない。
男として性欲というものはあるし、他人がつべこべ言うものでもないのはわかっている。そんなもの人の勝手だ、といえばそれまでなのだ。というのに、
「わかったよ。お前がそう言うならもうしない」
こちらの考えを尊重してくれるのだから参ってしまう。こういった一面は昔からずっと変わらない。
ぶっきらぼうで冷めていて、時折バカにされてはムカつくこともある。だけど、結局のところ明は優しいのだ。喧嘩だって数えきれないほどしてきたが、いつだって折れるのは明の方だった。
「ならいい……けどよ。お、お前が童貞卒業してんの結構ショックだったし、《百蘭》のラーメン奢れよな!」
「何だそれ、慰謝料かよ」
「そうだよっ。あと、茹でたまご付きでな!」
こそばゆさを誤魔化すように言うと、明は苦笑しながらも応じてくれて、千佳もぎこちなく笑顔を返した。
何もなかったことにはできないけれど、こうして変わらぬやり取りができるなら十分だ。この先も、二人の関係はきっと大丈夫――そう信じたかった。
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