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第2話 好きだと気づいたところで(6)★
◇
「おいっ、明!?」
放課後の教室。思いもしない事態に、千佳は声を荒らげた。
「もう誰もいないんだからいいだろ?」
「は!? いや、ちょっと落ち着けっての!」
何故か明に迫られているのだ。いつの間にこんなことになったのだろう――つい先ほどまでの記憶がまったくなくて考えもつかない。
なおも明は肩を掴んできて、いつもの冷静さが失われているように思えた。そのうちに壁に追いやられて逃げ場を失ってしまう。
「ど、どうしたんだよ、明……っん、う!?」
言葉が遮られる。気がついたときには、明に唇を押し付けられていた。
(こ、これってキスされてる!?)
状況を呑み込んだ瞬間、下唇を食まれてビクンッと千佳の肩が跳ねた。わずかにできた唇の隙間を縫って、明は歯列を割ってくる。
「ん、っ……んんっ」
明の舌が上顎をくすぐってきて、ゾクゾクとした感覚に襲われていく。
抵抗しようにも、知らずのうちに両手が頭の上で拘束されていて動かせない。明がどういうつもりなのかもわからないまま、口腔を弄ばれるしかなかった。
「っは、あ……」
ようやく解放されたときには、すっかり腰に力が入らなくなっていた。へなへなと千佳はその場に座り込んでしまう。
「明……どうして、こんな」
「さっきからそればっかだな。そろそろ観念したらどうだ?」
明は膝を折ると、制服のネクタイを緩めながら顔を寄せてくる。
「お前だって……本当は、シたいんだろ?」
「っ!」
低い囁きに体が疼くのを感じた。視線を上げれば、熱を帯びた瞳に見つめられて、息が詰まりそうになる。
(俺、このままだと明に……)
拒まなければと思うものの、体は正直に反応を示してしまう。明の指先が顎にかかるだけで、期待するように喉が鳴った。
「こんなの、駄目だろ……だって、俺たち」
幼馴染みなのに――再び唇を奪われて思考が鈍っていく。グラウンドから運動部のかけ声が響くなか、何度もキスを交わした。
最初は強引だった口づけが、次第に優しくなっていくことに愛おしさを感じて堪らない。甘えるように身を寄せたら、明がフッと笑う気配がした。
「童貞はキスだけでもうガン勃ちか?」
昂ぶった自身をズボンの上から、やんわりと撫でられる。一気に羞恥心が沸き立ち、千佳はわたわたと慌てた。
「こ、これはっ……あ、だめだ、って」
絶妙な力加減で撫でられれば、無意識のうちに腰が揺れてしまう。それどころか、ねだるように股間を擦りつけてしまっていた。
「っん、は……」
「幼馴染みにこんなことされていいのかよ。『駄目』って言うわりには、気持ちよさそうじゃん」
「も、そんなの……どうでもいいっ」
だからもっと欲しい、と明の体を抱きしめる。
その刹那、千佳の意識は散ったのだった。
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