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第2話 好きだと気づいたところで(7)
◇
なんて夢を見ていたのだろう――意識が覚醒するなり、千佳はため息をつきながら上体を起こした。そして、すぐにギクリとする。
「ゲッ、最悪……」
下腹部にぬるりとした感触があった。寝間着のスウェットパンツを下ろして確認すれば、下着に大きな染みが広がっている。
(野郎同士で……しかも、俺が抱かれる側って)
はっきりと夢の内容が頭に残っていて、千佳はベッドの上で項垂れてしまった。
まさか男である自分が、あんなふうに同性を求めるとは思わなかった。同性愛者ではないはずなのになんということだろう。
「もう認めるっきゃないじゃん……」
何かの間違いだと必死に目を逸らしていたけれど、やはり明のことが好きなのだ。一度自覚したら止めようがなく、明への想いで胸がいっぱいになるのを感じた。
(けど、好きだと気づいたところで――)
そう、この時点でとっくに失恋している。
結局のところ割り切って、今までと変わらぬ付き合いをするしかない。自分らしからぬ消極的な選択に自嘲するしかなかった。
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