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第4話 幼馴染みには戻れない(1)
今日は、誰もが解放感に心を躍らせる中間考査終了日。教室の至るところで「放課後、どこ行く?」といったやり取りが交わされており、千佳もまたその一人であった。
「なあ、昼メシ行こうぜ~?」
声をかけたのは、安田と沢村――ここに千佳と明を加えた四人が、クラス内での《いつものメンバー》だ。
試験期間中は半日で帰宅できるため、中間考査の打ち上げにでも行こうと思ったのだが、
「ありゃ、マジかあ」
安田はアルバイト、沢村は家族と先約がある……とのことで断られてしまう。残念がっていると、「ってかさ、日比谷」と沢村が口を開いた。
「もしかして、瀬川とケンカでもした?」
「は?」
突拍子のない言葉に、思わず間の抜けた返事をしてしまう。明と喧嘩なんて少なくとも今はしていない。
「別にしてねーけど?」
「でもさ、ヒビチカっていつも瀬川にべったりじゃん? 最近、なんか距離遠くね?」
安田も話に乗ってきて、そのようなことを言ってくる。うんうん、と沢村も頷いた。
「普通に肩組んだり、膝の上に座ったり?」
「瀬川に『お前近い』って言われても、全然気にしないのがヒビチカなんだよなあ」
本人を目の前にして、よく言えたものだ――二人に好き勝手言われて、千佳は眉をひそめる。
「お前ら、今までそんな目で見てたのかよ? そこまでいつもベタベタしてねーし」
「や、今だって。いつもなら瀬川に声かけんのに、先に俺らのとこ来てんじゃん」
沢村に言われて、ぐっと詰まってしまう。
確かに、いつもだったら明に声をかけていたはずだ。距離感なんて今まで考えたこともなかったし、こうして指摘されるまで気がつかなかった。
(俺……明のこと、無意識に避けてたのか?)
明の席に目をやると、頬づえをついている彼と視線が合う。こちらを気にかけている様子だった。
「瀬川が仲間になりたそうに、こちらを見ている」
「ぶっ」
安田の言葉に吹きだしてしまったけれど、笑ってなどいられるものか。
明との距離が遠いと言われれば、確かにそうだとしか言いようがない。ここ数日、千佳は避け続けていたのだと思う。
というのも、明を自宅に招いたときの一件が原因だ。あれ以来、明に触れられた感触を思い出しては、自慰行為に耽けっている――思春期の男子高校生として、性欲を持て余してしまう己がいた。
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