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第4話 幼馴染みには戻れない(2)

(ズリネタに使って、ホントすんません……)  おかげで胸中は罪悪感や羞恥心でいっぱいだ。自分ではいつもどおりに接していたつもりだったが、知らずのうちに、ぎこちなさが出てしまっていたらしい。  安田や沢村が気づいているということは、間違いなく明本人も気づいているだろう。ちょっとそれはマズい気がする。  明とは友達として良好な関係でいたいし、完全にこちらの都合だが、こんなことでギクシャクしたくはない――千佳はおずおずと明の方へ歩み寄った。 「明、このあとメシ行かね? 安田と沢村は用事あるみてーだから、二人なんだけどさ」  言いながらも、まともに顔を合わせられない自分にハッとする。ここ最近、ずっとこうだったのだろうか。  明はこちらをじっと見てから、小さく嘆息した。 「そうだな。駅前でなんか食うか」  明がいつものように淡々と答える。  特に変わったところは見当たらない。そのことに安堵した反面、彼がどう考えているのか気になって、千佳はどこか落ち着かなかった。  帰りのHRを終え、千佳と明は二人で教室を出る。帰り際、安田らに「ちゃんと仲直りしろよ」と茶々を入れられたが、「だから違ぇよ!」と一蹴した。 「なに話してたんだ、アイツらと」  昇降口でスニーカーに履き替えていると、明がぽつりと尋ねてくる。先ほどのやり取りを聞いて気になったのだろう。  千佳は内心動揺しながらも、正直に答えることにした。 「俺と明が、ケンカでもしてるんじゃないかって」 「確かにお前、最近おかしいっつーか。元気ないように見えたしな」  やはりあからさまに態度に出ていたようだ。わかってはいたけれど、本人の口から直接きいたら、申し訳なさが一気に押し寄せてきた。 「俺としては、そーゆーつもりなかったんだけど。なんつったらいいのか……」 「なに? もしかして、この前のことでも意識してんのかよ――クソ童貞」 「ぬわあああっ!?」  学校で話していい話題ではない。明の声を打ち消すように、千佳は大きな声で叫んで胸倉に掴みかかった。 「ンなワケあっか! ヘンなこと思い出させるな、バカ野郎!」  勢いのままに怒鳴ってから、はたと我に返る。周囲の生徒たちが何事かと見ていた。  千佳は慌てて手を離し、明も襟元を整える――外野からしたら、本当に喧嘩をしていると思われかねない。 「……最悪。俺が童貞なのバレたらどーすんだよ」  小声で言って背を向ける。言うまでもなく問題はそこではないし、こんなの単なる誤魔化しにすぎない。

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