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番外編2 恋人になった記念(2)

 その後も、一緒に写真を眺めながら思い出を話していく。  二人して覚えている出来事もあれば、片方しか覚えていない出来事もあったけれど、覚えている方が語り出せばすぐに思い出すことができた。  そうやってアルバムを捲っていくうちに、最後のページまで辿りつく。さすがに高校生にもなると親が写真を撮ってくれる機会も減って、アナログ媒体での写真があまり収められていなかった。 「そーだ! せっかくだから写真撮ろうぜ?」千佳が突然口にした。 「なんだって?」 「いや、だから恋人になった記念――的なヤツをさ。思えば一枚も撮ってなかったじゃん」  言われてみると確かにそうだ。何度かデートを重ねているものの、恋人らしいツーショット写真を撮った覚えがない。 「じゃあ、スマホで撮ってプリントするか」 「いーじゃん、それ! そんで新しくアルバムに追加すんのなっ」  そうと決まれば話は早く、千佳はやる気満々でスマートフォンを構えた。  二人で画面に収まるように身を寄せ、カメラレンズに目線を合わせる。構図が定まったところで千佳が合図した。 「はい、撮りまーすっ」  千佳の指がシャッターボタンに触れる瞬間――ふと思い立ち、明はその頬にキスをする。  連射モードにしていたのか、連続してシャッター音が鳴り響いた。不意打ちを食らった千佳はしばらく固まっていたが、やがて我に返ると、真っ赤になって叫ぶのだった。 「ちょっ、いきなり何すんだよ!?」 「恋人になった記念つったろ? 普通に撮ったんじゃ、今までと変わんねえじゃん」 「だ、だからって、こっ恥ずかしいことすんなよっ」  千佳は自分から行動して押すぶんには構わないが、逆に押されると弱いところがあるらしい。こちらだっていつもペースを乱されてばかりなのだから、これでおあいこだ。 「で? どんなふうに撮れた?」 「………………」  千佳が黙ってスマートフォンを渡してくる。  確認すれば、写真は十枚にわたって撮影されており、明がキスした瞬間がばっちり収められていた。画面をスライドさせていくたび、千佳の表情がみるみる変わっていって、明は思わず吹きだしてしまう。

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