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おまけSS ただ今、××開発中! ★

 それは、教室でジャージに着替えていたときの出来事だった。 「ヒビチカってさあ、きれーな乳首してんよな」 「はあ?」  唐突な安田の言葉に、千佳は訝しげな視線を向けた。しかし、相手はまったく動じることもなく、相変わらずのマイペースっぷりを発揮してくる。 「こう、いい感じに薄い色してんじゃん?」 「ンなこと言われてもな……つか、なんの話してんだよ」  目線を落とせば、薄桃色をした小さな突起がある。  確かにどちらかといえば色白だとは思うが、そんなところの色など気にしたことがない。男相手に何を言っているのかと呆れつつ、とりあえず聞き流すことにした。 「えー? だって、ピンクの乳首ってエロくね?」 「ひょわっ!?」  安田が後ろに回り込んできて、不意打ちのように胸元をまさぐられる。突然のことに、千佳はただ目を白黒させた。 「おっ、頑張れば揉めそうなカンジ」 「っ、ん、ふ……お、おいバカッ」  鼻にかかった甘い声が漏れてしまい、かあっと頬が熱くなる。  単なる悪ふざけにすぎないのだろうが、今となってはこんなの笑えない。何といったって、そこは明の手によって幾度となく触られ、まるで性感帯のように作り変えられてしまった部位なのだから。 「ん? あれ、もしかして乳首――」  と、安田が言いかけたときだった。耳によく馴染んだ声が聞こえたのは。 「その辺にしとけ。どいつもこいつも引いてんだろ」  明はやって来るなり、安田の肩に手をかける。  その鋭い眼差しには有無を言わせぬ迫力があった――ちぇっ、と安田は唇を尖らせながらも大人しく引き下がる。明が来てくれなければどうなっていたことか。 「はは、困っちまうよなあ。野郎の胸なんて揉んで、何が楽しいんだっての」  千佳が笑ってみせると、明は何も言わずに背を向けた。それから、ぼそりと一言。 「今日、お前ん家行くからな」 「ひっ」  ゾッとする低い声に体が震えてしまう。いつもなら喜ぶところだけれど、悪い予感がしてならなかった。 「やっ、明、そこばっか……やだって」  放課後。明を部屋に招いたところ、すぐさまベッドに押し倒されてしまった。そして今、こうして乳首を執拗に責められている最中である。 「『俺以外のヤツに、気安く触らせるな』って言ったよな?」 「あ、あんなの不可抗力じゃん! 俺、悪くねーじゃんかっ」 「お前が隙だらけなのが悪い」 「いやいやいや、友達同士の悪ふざけに……っ、あ」  千佳の口からまた甘い声が零れ落ちた。  既にシャツのボタンは外されており、露わになった肌の上を、明の指先が滑るように這っていく。 「乳首、すっかり感じるようになったな」 「はっ、ん……」  指先で摘まみながら引っ張られ、くりゅっと押し潰される突起――立派な性感帯として開発された乳首は、体中が疼くような快感を次々に生み出す。 (男なのに、こんなとこ弄られて感じるなんて……)  恥ずかしくて仕方がないのに、体は正直に反応してしまう。いつの間にか下着の中が窮屈になっていて、苦しいくらいだった。  そのことに気をよくしたのか、明が意地悪に口の端を吊り上げる。 「焦らしてるみてーで興奮する――ここ、もっと可愛がってやりてえ」 「な、なに言って……ひ、あぁっ」  明の言葉が鼓膜を揺さぶったかと思えば、おもむろに乳首を舐め上げられた。ちゅくちゅくと音を立てて愛撫され、あまりの羞恥に全身が熱くなる。  それに加えて、強く吸われながら甘噛みされればもう堪らない。甘痒いような痛みが快感となって、とめどなく襲いかかってくるのだった。 「あっ、ばか――乳首、だめだって」 「駄目ってわりには、すげー気持ちよさそうなんだけど」 「や、だ……ジンジンすっからあ」 「本当だ。赤く腫れてんの、すげーエロい」  ぷっくりと膨れた突起を見て、明は満足そうに目を細める。それから再び口に含んで吸い上げると、もう片方の乳首もキツく指で捻り上げてきた。 「あ、ン、あぁっ」  両方の乳首を同時に責められ、千佳の腰がびくんと跳ね上がる。痛いくらいなのが余計に気持ちよくて、自然と息が上がってしまうのを抑えられない。  このままではどうにかなってしまいそうだ――その一心で、千佳は明の髪をくしゃりと掻き乱した。 「おねが……他もさわって」  切なげに訴えるも、明は何も答えてはくれない。ただひたすらに胸ばかりを責め立ててくる。 「明、お願いだからっ……こっち、も」  解放できない熱をどうにかしたくて、千佳は明の体に腰を擦りつけた。  ところが、明がそれを許してくれることはなく、 「擦りつけんの禁止」  冷たく言い放たれてしまい、もどかしさばかりが募っていく。  そんなことを言われても、すでに身も心も限界まできている。自身だって、今にも達してしまいそうなほど張りつめているのに――千佳は泣きそうになりながら、必死になって訴えた。 「おねがい、イかせて……こんなの、も、むりっ」 「さっきからおねだり? ここ、キツそうだもんな」  形を確かめるかのように、明の指が股間をなぞっていく。それだけでもゾクゾクとした快感が駆け抜けていって、千佳は体を震わせた。 「ふあっ、あ、ん……っ」  期待の眼差しを向けるけれど、明はあくまで焦らすつもりらしく、一向にベルトを緩めてはくれない。ズボン越しにそこを撫でながら、またもや胸元へと顔を寄せてくる。  そのまま舌先で転がすように舐められ、ぢゅうっと音がするほど強く吸われ――頭の中が真っ白になるほどの快楽の波にさらわれていく。さんざん弄られていたせいだろうか、乳首はひどく敏感になっていた。 「明っ、あきらあ……っ」  それでも絶頂を迎えるには至らず、千佳は悩ましげに明の名を呼んだ。が、明は見向きもしない。 「千佳、可愛い」  そうして、その行為は彼の気が済むまで続けられたのだった。     ◇  例の一件からしばらく経って、後日。  体育の授業を前にして、またもや安田がとんでもないことを言ってきた。 「ヒビチカの乳首がやらしく見える」 「っ!?」 「なんか立ってね? シャツで擦れちゃった?」 「安田あっ、もうそーゆーのやめろお!」  命が惜しくないのか、と安田に詰め寄る。  その背後には、無表情のままこちらを見ている明の姿があった――。

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