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第29話 番外編 それぞれの傷・遥視点★

「あ……っ、や、……和博さん……っ」  和博さんの寝室に、僕の甘ったるい声が響く。  服を全部脱がされた僕は、和博さんに身体の後ろ側を、文字通り全部舐められている。  四つん這いになった僕を、和博さんが後ろから抱きすくめ、うなじから足の指まで舐めたあと、僕のお尻に顔をうずめた。汚いから止めてと言ったけれど、和博さんは「ヨウに汚いところはない」と言って聞いてくれない。うう、恥ずかしい。  確かに、今日はちょっと期待して準備しちゃってたけどさ。やっぱり、恥ずかしいものは恥ずかしい。  和博さんの舌が、僕の後ろの蕾をつつく。温かく、ぬるりとした感触がそこを這うだけで、僕の後ろは意図せずヒクヒクと動いた。 「ヨウはここもかわいいな。こんなに綺麗なお尻、見たことない……」  和博さんが感動したように呟いている。前から思っていたけど、和博さん、ちょっと変態? 普段顔色を変えずに仕事をしているから、こういう時はタガが外れてるのかもしれない。 「ヨウ、孔がヒクヒクしてる……えっちなお尻だ」 「もうっ、眺めてないで先に進んでぇ……!」  和博さんが僕のお尻の肉を広げ、間近で見ている気配がしたので堪らず声を上げる。すると指が入ってきて、僕は悲鳴をあげた。 「ああ……入ってしまったよ」 「ん、んあ、あ、ああ……っ」  和博さんが僕の中で、指を動かしているのが分かる。前立腺を刺激されて、恍惚とベッドに突っ伏した。ゾクゾクして腰が震える。気持ちいい。 「いい子だヨウ。きちんと指を受け入れられたな」  和博さんはセックスの時、綺麗、かわいい、いい子、よくできた、って僕を褒めてくれる。僕にトラウマがあるせいもあるけれど、そう言われると余計にゾクゾクして、気持ちよくなるんだ。ああ、僕はちゃんと愛されてるんだなって実感して。  だから僕もきちんと和博さんに伝えるんだ。 「か、和博さんっ、気持ちいい……っ」  不思議なことだけど、こうして声に出すと、さらに感じるようになるみたい。ゾクゾクが大きくなって、僕は握った手の甲で口を塞ぐ。 「ヨウ、……ヨウのかわいい声を聞かせてくれ」 「だ、だって……っ、あっ、……んんんんーっ!」  そう言って、和博さんは僕のお尻にキスをした。ちゅっちゅっとくすぐったい感触がして、それが一瞬で快感に変わり、僕のお尻が揺れる。ヒクヒク腰を動かしながら揺れるお尻を、大事そうに撫でた和博さん。指を増やすぞと宣言した通り、後ろの圧迫感が増して僕は悶える。 「あぁ……っ! 和博さんっ、これ僕出ちゃいそう……っ!」  前立腺を刺激され続けると、中から押し出されるように射精してしまうことがある。今まさにその感覚がして、僕はシーツを握った。その直後、意識が急激に遠のき、宣言する間もなく達してしまう。 「──っ、はあ……っ!」  ブルブルと背中を震わせ、断続的な快感に耐えた。後ろもキツく締まったみたいで、和博さんは感動している。……やっぱちょっと変態だ。 「すごいなヨウ」  よくできた、かわいい、と和博さんはキスをくれる。その優しいキスに、僕はやっぱり意識を半分溶かされ、身体をひっくり返されて繋がったことにもあまり気付かなかった。  目の前の恋人に僕は手と足でしがみつくと、和博さんは軽く動き出す。僕が足で締め付けているから、あまり大きく動けないってのもあるけど。 「ヨウは、この体勢好きだな」  僕がやっているこの体勢は、いわゆるだいしゅきホールドと言うやつらしい。和博さんとは密着していたいからそうするのだけど、そのネーミングは合っていると思った。 「うん好き。和博さんとくっついていたいし、気持ちいいし、大好きだし……っ」  ぬちゅぬちゅと、繋がったところからやらしい音がする。和博さんの息は少し上がっていて、それが色っぽくて、和博さんの唇を僕ので塞いだ。 「ヨウ……っ」 「ん! あ! ……ああっ!」  パンパンと音がするほど、和博さんは僕を貫いてくる。温かい体温が、下半身の熱が愛しくて、僕は全身で和博さんを包み込んだ。 「ヨウ……ヨウ。かわいい……っ」  与えられる刺激全てが嬉しい。そう思ったら胸がきゅう、と締め付けられて、切なくなって泣けてきた。  好き。その感情が高ぶると涙が出るなんて、思ったこともなかった。和博さんが僕を揺さぶりながら、流れた涙を吸い取って、顔中にキスの雨を降らす。愛されている。愛されるって気持ちいい。  和博さんが笑った。 「ヨウ、後ろがヒクヒクしてる。いきそうなのか?」  貫かれながらの会話なので、僕は言葉を発することができず、こくこくと頷いた。腰と太ももも震え始め、無意識のところで和博さんをきゅうきゅう締め付けている。 「泣きながらいくなんて、ヨウはなんてかわいいんだ……っ」 「……──ッ!!」  途端に意識が真っ白になり、僕は息を詰めた。ギュッと拳を握ってブルブル震えていると、和博さんは止まって待っていてくれる。  この、射精を伴わない中イキってやつも、和博さんとセックスするようになってからできるようになった。これは射精よりも強烈で、しかも何度も達することができるらしいから、苦しいんだけど。  けど、これを見た和博さんは、また感動してくれるのだ。 「ヨウが私ので気持ちよくなってくれてるなんて、嬉しい」  かわいい、と言って和博さんはまた動き出す。僕は嬉しくて、また声を上げながら和博さんにしがみついた。  和博さん好き、もっとして。  甘ったるい声でそう言いながら、僕はまた意識が白く飛ぶ。 「ああ、もっと愛してあげよう。ヨウが満足するまで……!」  唇を激しく吸われながら、僕も離したくない、離れたくないと泣きながら訴えた。本音をずっと言えずにいた僕は、こういう時、しかも泣きながらでなきゃ自分の気持ちが言えない。それでも和博さんは言えることはいいことだと、僕をめいっぱい甘やかしてくれる。  やがて和博さんが僕の中に熱を放つと、熱く湿った和博さんの身体が愛おしくて唇にキスをした。敏感になっているのか、ビクつく和博さんがかわいい。そのままちゅっちゅしていると、またスイッチが入っちゃったのか、和博さんは舌を絡ませた本気のキスを仕掛けてくる。  唇を離すと、和博さんが額を合わせて尋ねてきた。 「もう一回、いいか……?」  僕は和博さんの両頬に手を当てて、微笑む。  もちろん答えは、イエスだ。 《番外編・終わり 後日談へつづく》

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