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6月 合同結婚式 そして…
side:涼一
俺達と一緒にリシェールと陽太の結婚式も行う。
客の殆どは光神と闇神の降臨が本当なのかという目的だろう。
まあルキウス国王の結婚式というだけでも人は集まる。
二人は国王と将軍の正装だが、俺とリシェは如何にも神っぽく演出する必要がある。
俺のはどうでもいいが、リシェのは華やか且つ神々しい、それでいて派手にならない衣装だ。
当然リシェは男の子だからドレスでは無い。
飾ったウェディングスーツと言った感じにした。
足を出させたかったが、他の奴に見せたくないから肌は殆ど露出していない。
因みに俺達のメインはこの後日本で行う。
陽太が日本に来れないからこっちでまず行う事になったからだ。
「アレク様、決まってますね。」
俺が花嫁控室にリシェを迎えに行くと、リシェが開口一番に言ったセリフだ。
……女神が居る…。
「お、おかしいですか?」
感動の余り黙った俺に不安そうになるリシェ。
「いや、見惚れていた。」
「そうですか?有難うございます。」
照れながら言葉を返してくる。
こんなに美しいリシェを妻に出来る俺は、幸運の星の元に産まれたんだろう。
「そろそろ時間ですよね、行きましょう。」
もう小一時間程眺めていたかったがそうもいかない。
「宜しく、リシェ。」
手を差し出すと俺の手にリシェが手を重ねる。
「はい、宜しくお願いしますアレク様。」
いつもの綺麗な微笑で俺にそう返してくる。
リシェの足元は飾りのせいで歩きにくいので、丁重にエスコートする。
本当は抱き運びたかったが、こうなる事を予測してリシェの控え室を式場のすぐ傍にしてもらったので、数歩だけリシェに我慢して貰った。
抱き上げてすぐ降ろすのは変だしな。
「リシェ様!」
リシェールと陽太が式場の入口で待っていたので合流した。
「リシェ綺麗だね。」
「有難う、陽太さん…あ、ルイス将軍。」
「俺達の仲なんだから、陽太でいいって。」
「はい。じゃあ陽太さんもカッコいいですよ。」
「ん、リシェ、俺に惚れちゃうか?」
相変わらず陽太は冗談を言うが、ちと腹立たしい。
「本当に綺麗だ、リシェ様。」
「有難う。リシェールもいつもとまた違って素敵だね。」
リシェールは嬉しそうに照れ笑いする。
「さあ、そろそろ時間だ。」
俺の一言でみんなに気合いが入る。
他人の結婚式しか経験が無い俺も含め、上手く行く事を願いつつ開いた扉を潜り、ホールの最奥へと歩みを進めた。
一応移動中リシェが結界を張っている。
特に何も無く所定の場所に着いたので一安心。
かなり大勢の参列客が居る。
リシェをチラ見すると浮かない表情だ。
緊張してるんだろう。
リシェの耳許に口を近付けて、
「俺が付いている、平気だ。」
とだけ言う。
分かりきっている言葉でも、言われる事でだいぶ違う筈だ。
リシェは大きく息を吐いて緊張を解した。
「有難う。」
と小さく俺に呟き、いつも通りの綺麗な微笑が浮かんだから安心した。
式は滞り無く進んだ。
殆んど日本のと変わらない。
ただ余興は無いようだ。
王族貴族だのが多いからだろう。
一般人は外で待機している。
まずはリシェール達が契約する。
夫婦となる事を宣言してから、契約書にサインだ。
以前リシェと婚約の時にやったのと同じだ。
「リシェール・ラー・ルキウスは、陽太・ルイス公爵と夫婦になる事をここに宣言する。」
「陽太・ルイス、リシェール・ラー・ルキウスと夫婦になる事をここに宣言する。」
二人が宣言して契約書にサインすると、俺は魔法を展開して契約書を受け取る。
書自体は消えてしまうが闇の魔力で二人の中に常に存在する。
そして次に俺達。
「闇神アレクシウス、光神リシェールと夫婦になる事を誓う。」
「光神リシェールは、闇神アレクシウス様と夫婦になる事を誓います。」
同じようにサインをして誓約書を受け取る。
他の者が書に介在しないようにこのような形を取る。
また、宣誓は本名でなくてはならないから、これで俺達が本物だと信じるだろう。
指輪の交換。
石が大きくない物にした。
魔法を行使するのに邪魔になってはならない。
リシェール達も石は違うが、その意見に合わせたようだ。
キスは残念ながら軽く一瞬しただけだ。
神を名乗っている以上あまり俗っぽく見せられないからな。
さて、この世界の挙式には余興は無い。
客が貴族が殆んどだからな。
だが俺らからの余興を用意していた。
俺がまず闇魔法で会場を夜の様に暗くする。
人々は俺が敵では無いとわかっていても落ち着かなそうだ。
そこへリシェが光魔法でオーロラを作った。
これは何て事は無い、プロジェクションマッピングの原理だ。
だが見た事が無い人にとっては未知の物になる。
バルコニーへ出ると見上げている人々に、リシェール達が手を振る。
歓声が上がるのを見取ると、先程のように今度は空を闇で覆う。
人々はしんとなる。
リシェがゆっくりと光魔法で闇の空を星のように輝かせる。
最終的に光が闇を覆い、明るい空が戻る。
自然に干渉したように見えるパフォーマンスのお陰で、俺達の存在を信じる人間が確実に増えたはず。
陽太を置いて俺達三人は日本へ戻った。
急いで式場に行く。
リシェールは客として出席するため支度に時間が掛からないから、柚希の着替えを手伝っている。
俺も支度はそんなに掛からなかったので、柚希のご家族に挨拶に行く。
「あらー、涼一君さすがカッコいい。」
惚れちゃいそうー。と棒読みで続ける美月さん。
俺は美月さんのタイプじゃないからな。
もうすぐ二歳になる、俺から見て甥に当たる子供を腕に抱いていた。
隣に居る美月さんの旦那さんのラデルト義兄さんがもう一人、そっくりな子供を抱いていた。
「煌(きらめき)と輝(かがやき)でしたね。」
所謂キラキラネームだ。
「あら、流石ね。見分けられる人少ないのに。」
「人の特徴を覚えるのは得意なので。」
あちらで皇帝、こちらで経営者を伊達にやってはいない。
「涼一君おめでとう。これで本当に兄弟だね。」
「宜しくお願いします。」
と言いながらラデルトさんと握手を交わした。
「涼一、柚希君を幸せにしないと縁切るからね!」
気合いがやたら入ってるお袋が背中を叩きながら言ってくる。
「いやぁ、柚希君みたいな息子が出来て嬉しいですよ。」
親父が美月さん達に本当に嬉しそうに語っている。
俺の存在は無視か。
まあ柚希を受け入れてくれる事は助かる。
嫁姑問題も本当に無さそうだ。
柚希の支度が整い、会場に移動した。
俺はチャペルの扉内側で柚希を待つ。
程無くして、美しく着飾った柚希が扉を入って来た。
こっちでもウェディングスーツ。
だがヴェールを付けて、レースも割とある。
ドレスに近いデザインだ。
俺はその姿をしっかり目に焼き付けた。
というか常に様々な柚希を焼き付けているのだが。
「お待たせいたしました。」
柚希はそう言ってクスッと笑う。
ゲームだと思っていた異世界で、柚希と初めて心が通じた時の、婚約式の時に柚希が俺に向けたままの台詞。
柚希も覚えていてくれた…。
些細な事なのに、それだけで俺は幸せを感じてしまう。
柚希の手を取るとゆっくりと共に前の台座に歩む。
つつがなく式は進んだ。
指輪はあっちの世界と敢えて同じ物にした。
そうすればどちらの身体でも同じ指輪をしている気分になれる。
柚希が嵌めている婚約指輪を右手に嵌め直すと、結婚指輪を左手の薬指に嵌めた。
柚希の方からも俺にも同じ指輪を嵌めてもらった。
そして…キスは長くはしないで一瞬だけ舌を絡めて終える。
客に子供も居るからな。
この後にいくらでも口を吸いまくれるんだし。
式を終えると隣接のホテルに場を移した。
レストランフロアでビュッフェで皆に過ごしてもらう。
柚希と二人で挨拶に回る。
「柚希、あんたも主婦頑張らないとね?」
「いや、柚希はまだ大学が四年間あるから、当分は主婦はさせません。」
柚希の肩を抱きながら美月さんに返す。
「あたしも結構過保護だったけど、より凄い過保護っぷりね。」
「うん、駄目人間になりそうで怖いよ。」
柚希の言葉でみんなが笑う。
ここに揃っている人達は裏が無い。
俺も何の計算も無く自然と居られる。
安住の地と言うのはこういう感じなんだろうな。
レストランは今日一日取ってあるから、各々で部屋に引き上げる手筈になっている。
まだ留まっている人に軽く挨拶をすると、柚希を抱き上げて部屋へ移動する。
顔を赤くした柚希はヴェールで顔を隠してしまう。
途中柚希の予想通り数人擦れ違ったが、服装的に男の子を抱き運んでいるとは思いもしていないだろう。
「ふぅ…やっぱり疲れたね。」
ベッドに柚希を横たえると、ヴェールを外しながら柚希は大きく息を吐く。
「もう休むか?風呂は寝てる間に俺が入れておいてやるぞ?」
「そういうわけには行かないよ…。」
「無理したら駄目だぞ。他の事なら今後幾らでも出来るんだからな?」
柚希が薄っすら微笑を浮かべる。
「涼一さんは僕を甘やかし過ぎるよ。」
「全力で甘やかしたいからな。」
柚希の横に寝転ぶと、柚希の柔らかい髪を撫でる。
「嬉しいけど、僕にも甘えてね?」
「……そうだったな、もう柚希の全ては俺の物になったんだから。」
柚希の目が潤む。
「約束、果たせたね。」
「ああ…時間が掛かったな。」
「涼一さんでなければ、ここまできっと辿り着けなかったね。戸籍とか色々あるし。」
「ああ。でもやはり日本ではどう頑張っても養子になるしかないからな。柚希と親子と言うのはちょっとな…。」
「いいよ。将来籍も入れられるようになったら入れよう。あっちでは結婚成立してるし。」
「将来的にはあっちで暮らすだろうしな。柚希が大学卒業したら、いつでもあっちで暮らせるように、こっちの事も色々整理しないとな。」
「そうだね。あ、そう言えばここにはいつまで居る予定?」
そう、今はカナダに来ている。
挙式からすぐ新婚旅行にする為に。
リシェールも海外旅行は初めてだから、陽太は居ないが非常にウキウキしている。
以前美月さんの結婚式をハワイで行った時リシェールも参加したが、時期が悪く挙式だけ参列して、本格的な旅行を長々と出来なかったからだ。
リシェールの事を考えたからなのか、丁度ノックと共にリシェールの声がした。
来るとは思っていたので鍵は開けてあった。
「いいぞ。」
それだけ言うと、リシェールは遠慮無しに入って来る。
「柚希、疲れているな。」
早くも柚希の疲労に気付くリシェール。
リシェールはベッドに倒れている柚希に抱き付き仄かな治癒を実行する。
二人の関係上、魔力が無い日本でも僅かだが互いを癒せる関係……羨ましい。
「妬くな涼一。」
「妬いているのはお前の方じゃないのか?」
「あ、有難うリシェール。だいぶ疲れが取れたよ!」
俺とリシェールの会話に無理矢理割り込む柚希。
喧嘩を止める方法をすっかり学ばれてしまった。
「治癒は終わったな。他に何か用が?」
「明日旅行、出来るのか?」
目を据わらせたリシェールが言ってる言葉は、今日の初夜で、柚希が明日旅行に出れなくなるのではと言いたいらしい。
「加減はする予定だが、本能が止められなかったら、明日は無理かも知れないな。」
「それはお前の匙加減ではないかっ!」
「夫婦の事だしな。旅行は明日じゃなくてもいいだろう?まだ数日あるんだ。」
柚希は真っ赤で絶句している。
「初夜は一日しか無いんだぞ。そっちを優先に決まってるだろう?」
「うっ…。」
言葉に詰まるリシェール。
「あ、あの……明日ね、リシェールには悪いけど、また治癒してくれたら旅行出来ると思うんだけど、どうかな?」
柚希の提案に顔が明るくなるリシェール。
「明日、私の全魔力を使って柚希を回復させまくる!」
「それはリシェールが起き上がれなくなっちゃうから、適度に宜しくね。」
「柚希は優しい…。」
感動するリシェールを部屋の外に押し出して、今度は鍵を掛けた。
柚希の所に戻ると、柚希に覆い被さる。
「涼一さん……旦那様。」
少し顔を赤くして恥ずかしそうに言う柚希。
目と目を合わせながら柚希の頬を愛おしさのまま、何度も撫で下ろす。
「俺の花嫁だ。」
「うん。」
柚希が目に溜まった涙を流す。
いつもは泣かないで欲しかったが、今日のはずっと見ていたかった…嬉しくて泣く柚希を。
「後は子供だな。」
「あっ、う、うん。」
「あっちに行けば必ず出来る。だから、日本に居る必要が無くなるまで当分子供はお預けだな。」
「そう、だね…。」
より真っ赤になった柚希が顔を俺の胸に押し付けてくる。
俺に取ってはお誘いだ。
「本当に疲れは平気か?」
確認するも、無理と言われてももう止められない。
「うん、リシェールの治癒で平気そう。」
「そうか、アイツもたまには役に立つな。」
「たまにじゃなくてリシェールは頑張ってるよ。」
「……妬くぞ。」
「えっ、あ…でもね、疲れてても涼一さんとの時間を過ごす為なら、僕だって頑張れちゃうよ。」
俺は速攻で柚希に噛み付く勢いでキスをした。
「んっ…んっ!!」
硬くなった俺のチンポで柚希のおちんちんに衣服越しにグリグリやりながら、柚希の唇を貪る。
「んぅ、ふぅっ!涼一さん…衣装、汚れちゃう!」
俺は気にならないが、衣装は普通に考えたら高いのは間違い無い。
すぐにイかしつつ射精そうと思っていたので、衣装は犠牲にしようとしていたのだが、柚希が気にするのは明白だ。
破らないように気を付けながらも、急くように柚希の服を脱がす。
俺も脱いだ。
柚希は疲れているし、明日は観光だから、加減しないとな。
でも初夜だし、本能のまま燃えたい。
これらの条件をクリアしたエッチを頭で計画する。
俺が一度出してから二回戦で全部出し切ればいい。
「柚希…。」
柚希の目を見詰めながら、MAX状態の俺を掴んで柚希の顔に差し出す。
「んっ…。」
すぐに柚希は俺のジュニアを口に含んでくれた。
柚希がゆっくりゆっくり俺の先端から胴体を舐めていく。
同時に両手で睾丸をやわやわと揉んでくれる。
気持ちいい…あと俺を咥える柚希が視界に入って眼福だ。
括れに舌先を這わせながら、軽く吸ってくれる。
このまま柚希に任せたいのに勝手に腰を前後させてしまう。
柚希は仰向けだから顔を動かせない。
だからどのみち俺が動く必要がある。
「んっ…んっ!」
口の中の俺の質量で、少し苦しそうなのが余計に滾ってしまう。
自然腰を強く動かしてしまい、柚希はペースがすっかり崩れて、俺に口の中を突かれるままになる。
枕と俺に挟まれて全く顔が動かせないためか、口端から唾液を溢れさせている。
「柚希…!」
柚希の喉を突き上げて、スパートを掛ける。
「ふっ…ぅんっ!」
苦しそうな柚希の声に快感が高まり、すぐに柚希の喉に直接精を放った。
「んっ…んぅ…っ!」
流した精液を喉を必死に動かして飲んでいく柚希。
俺が自身を引き抜くと、綺麗に飲み干してくれていた。
飲み終えた柚希はにっこりと微笑を浮かべた。
俺が大好きなその顔に顔を近付けて、柚希が飲み込みきれなくて溢れさせた唾液を舐め取る。
「ふぅ…涼一さぁん…。」
蕩けるような柚希の表情を見ながらキスを繰り返す。
いつの間にか垂れていた柚希の愛液を手探りで手に取って柚希に見せ付ける。
「チンポしゃぶって興奮したか?」
「…う、うん……。」
恥ずかしそうな返事が萌えてしまい、出したばかりなのにフル回復した。
柚希の後孔に押し付ける。
「涼一さん…愛してる。」
欲を孕んだ表情ながら、甘ったるい声で俺を求めてくれる。
「俺も柚希だけだ。」
愛しく返事をするとすぐに柚希の中に一気に入る。
「あっああっ!りょういちさんっ…!」
前立腺に先端をぶつけて何度も攻め立てた。
「ああっ!そこっ…!あっあああっ!!」
柚希が高く叫んで弾ける。
当然まだ終わりじゃない。
動きを再開させてより奥を突き上げる。
「あっ、まだ…びんかんで…んんっ!!」
イったばかりの敏感な壁を強く擦るように動かす。
「あっあっ!またイ…ちゃ…っ!」
「何度でもイってくれ。」
柚希がイく表情、動き、声の全てが俺の快感を高めてくれる。
「ああっ!きもちいぃ…っ!またでちゃう……あああっっ!!」
柚希の二度目の絶頂で、中の俺がキュウキュウ締め付けられる。
強過ぎる快感に俺も限界になってきた。
「柚希、一緒にイくぞ…っ!」
加減無しで柚希の中を突き上げると、壁が快感の収縮で俺に纏わり付く。
柚希も腰を動かすからその気持ち良さは半端無い。
「柚希っ…!」
「りょういちさ……あっ…あああーーーっっ!!」
ほぼ同時に達して、俺は柚希の中に、柚希は俺の腹部を汚した。
柚希の放ったものを指で拭い取り、激しい絶頂で呆けている柚希に見せ付けるように舐めると、柚希はうっとりと俺を眺める目付きに変わった。
柚希にも指を差し出すと躊躇無く舐めた。
「エロいな。」
「りょういちさんの…せいだよ…。」
「そうだな、俺が柚希を俺色に染めたんだ。」
愛しくて柚希の額を、頬を撫でると、柚希は気持ち良さそうに目を細めた。
「柚希…俺の物で最愛の花嫁。」
「うん、貰ってくれて…有難う。」
前世の約束はこれで果たせた。
唇を重ねて互いの存在を確かめ合った……。
あれから9年。
柚希は大学を卒業してから俺の会社で働いている。
5年前までは柚希を働かせるとか考えられず俺が養うつもりだったが、過去に試した通り柚希は外交の才能が凄かった。
俺が取れなかった(先方との相性が悪いからどうでも良かった先など)客先を簡単に落として来る。
そのお陰で新しい事業に発展したりしたので、恐ろしく経営は良好だ。
晴れて柚希は俺の会社で働く事になった。
柚希が楽しそうなので俺も嬉しい。
柚希は美しく成長した。
俺の希望で、少しだけ髪の毛を伸ばしてもらったら、益々中性的な感じになった。
以前は可愛い感じだったが、今は……本当に綺麗だ。
俺はそんな柚希に見合う人間で在りたいから、俺に出来る事…美容なりジムなりに通ったりもしている。
「涼一さんっ!」
柚希が嬉しそうに駆け寄って来たので、両腕でしっかり抱き締める。
ここは社長室だから遠慮無くキスをした。
「んっ?柚希、少し熱があるな。」
「えっ、本当?自分で気付かないのに涼一さんは凄いね。」
柚希の身体の事は常に俺は独自の方法でチェックしているからだ。
それを知られたらキモがられないか心配だ。
「今日は帰ろうな。俺も終えるから。」
「あ…御免ね。」
「気にするな。二人共少し働き過ぎだと感じていたからな。」
そう言うと柚希を抱き上げる。
「歩けるよ…。」
もし人が居たらと考えてしまうのだろう。
未だに柚希は赤くなる。
「いつまでも見せ付けるのは抵抗あるんだな。」
「だって、実はどう思われてるのかとか気になっちゃう。」
「俺は昔から気にしないからな。」
そう言い切ると柚希がクスリと笑った。
可愛い、食べたい。
だが熱があるから今日は駄目だ。
家に着くと、身体に負担を掛けないように、暖房をガンガンにして柚希を手早く洗った。
拭き終えた柚希を先にベッドに横たえ、しっかり布団を掛けてから自分を洗った。
柚希に軽食を食べさせて、口移しで薬を飲ませた。
「よし、寝るぞ。」
時間が早過ぎて俺は寝られないだろうが、柚希を寝かし付ける為抱き締めて髪や頬を撫でたり、背中を軽く叩いたりしていると、三十分程で薬が効いてきたせいもあってか、柚希がうとうとし出す。
「…涼一さん、僕は本当に幸せだよ。何年経ってもずっと、涼一さんに感謝の毎日だよ。有難う。」
「それを言ったら先に惚れた俺の方が幸せだ。有難う柚希。俺を幸せにしてくれて。」
「涼一さん……。」
自然にキスを交わす。
柚希が調子悪く無ければ確実にヤる流れだ。
いつの間にか俺も寝ていた。
だが、急に不安が胸に押し寄せる感じがして目が覚める。
初めて感じる感覚……汗をぐっしょり掻いていた。
起き上がり周囲を素早く見回す。
柚希は居る。
「柚……。」
柚希を起こそうとして俺はギクリとして手を止める。
「柚……希?」
柚希の脈を取りながら心音を確かめる。
いや、そんな事をしなくてもわかっていた。
伊達に俺は死を司ってはいない。
柚希はまるで眠るように死んでいた……。
救命措置をしても無駄だとわかってしまう。
これから何をするべきだったか…。
俺は激しく混乱していた。
「涼一っ!!」
どれぐらい経ったかリシェールが真っ青な顔で部屋に飛び込んで来た。
「ゆず……きは!?」
そうか…リシェールは柚希の魂の居場所がわかるんだった。
口にすると物事が進んでしまう気がして、どう説明したものかと考えてしまう。
ああ…全然いつもの俺らしくない。
「ゆずきっ!嫌だ、頼むっ逝かないでっ…くれ!りょういち、何とか…出来ないのかっ!?」
俺が横に首を振ると、泣きながら膝から崩れ落ちるリシェール。
柚希の亡骸に縋るようにして号泣し出した。
呼んだ医者に見てもらい、原因はわからないと言われた。
美月さんが去年亡くなった時から嫌な予感はしていた。
多分内包する魔力の強さが強過ぎて器の生命が削られていた。
しょっちゅう熱が出ていたのも、それが原因だったんだろう。
密葬にして柚希を見送った俺は、仕事に没頭した。
必ず柚希は俺の元に再び戻ってくれると信じているから…。
next 十年後
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