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第26話寂しさを埋めたのも安心をくれたのも
多分俺は最初から健人が特別だったんだと思う。
俺は小学生の頃から勉強も運動も人間関係も
なんでもそつなくこなす子供だった。
甘えないしわがままも言わない手のかからない子供だった。
寂しいとも言わず、ひとりで大丈夫だと言う俺を、
仕事で忙しい両親は安心して俺を1人にすることが多かった。
毎日夜遅くなる両親が帰って来るまでの間、
ひとりで用意してあるご飯をチンして食べ、部屋で漫画を読んだりゲームをして寂しさを紛らしていた。
学校に行けば友達はいるし楽しいけど、家で親を待つ時間は嫌だった。
小学生2年に上がってからしばらくして、
斜め向かいの家に健人が引っ越してきた。
健人がお母さんと一緒に挨拶に来た時
俺は同じ歳の子がすぐ近くに越してきて嬉しくてすぐ部屋に手を引っ張って連れていき、一緒に遊んだ。
それからは毎日一緒にいた。学校でも帰って来ても。
健人がうちに来てご飯ギリギリまで遊んで帰ったし、親が遅い時は健人の家で夕飯をご馳走になり
そのまま泊まらせてもらったりしていた。
気がついたら健人といつも一緒にいて
俺は寂しくなくなっていた。
健人の前ではいい子の俺じゃなくても良くて
本当の自分でいられた。
健人はどんな俺でも受け入れてくれていて
健人は俺に安心を与えてくれていた。
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