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第10話 後日談。R18
『子作りするか~』
そう言った時の奴の顔が今でも忘れられない。
俺、本郷洋介二十六歳。パートナーの本郷昴と同棲、結婚を始めて五年。
まだ番関係にはなっていない。
大学卒業と同時に同棲をスタートさせ、お互いの両親に結婚すると挨拶に行って、その年の冬に結婚した。
今俺は昴の両親が経営している会社の子会社で営業職をしていて、昴も本社で営業職を頑張っている。
俺の家はちょっと複雑で、結婚の挨拶はいいからと断っていたんだが、昴が納得するはずも無く……。取り敢えずは父親だけに会ってはもらったが、好きにしろ。と一言で終わってしまった。
俺の家が複雑なのを昴に言ったのは、初めて昴と事を致した日だ。
本当は致す前に言った方が良かったのは十分に理解していたが、確実にものにしてから伝えた方が断りづらいだろ?だから敢えてそうしたってのもある。
狡くても、自分のαを手にする為ならなんだってする。
こんな自分の性格や考え方を植え付けた家が、俺は大嫌いだ。
まぁ、端的に言ってしまえば俺の家はα至上主義の家だ。だからと言って昴の家みたいに代々の名家では無い。
曾祖父さんの代で商売が上手くいき莫大な財が手に入った成金の家で、プライドがえらく高い子供がそのまま大人になった感じの人が、俺の父親。
お見合い結婚したΩの母親との間に俺が産まれる。
幸せな日々は、俺が中三の時に終わりを告げた。
それは、αとして大事に育てた俺がΩだと判明したからだ。
それまではなんでも自分の手の中にあった。父親を筆頭に母親、友達、良い学校だって……。欲しい物はなんでも買って貰えたし、成績だって頑張っていつも上位をキープしていた。それはαだと信じて周りや自分自身疑わなかったから。
思春期に行われるバース性検査で中々結果が出なかった俺は、中学三年の最悪な時にバース性が判明する。
それからは面白いほど今までとは真逆の生活が待っていた。
父親は俺に興味を無くし、外で女を作った。その人との間に子供が生まれ、その子供はαだ。
母親はΩの子供を産んだと散々父親から暴力を受けて、精神がおかしくなって精神病院に入院。見舞いに行った俺に産まなければ良かったと罵声を浴びせて、それ以降は俺に会ってくれなくなった。
それなのに父親も母親も世間体を気にして離婚はしていない。まぁ……、番関係を結んだΩに番を解消するって事は、死ねと言っているようなものだ。それに、母親は番を解消する前に精神を病んでしまったから、解消されると本当に死んだかもしれない。
父親もそれが怖くて番も離婚も解消できないのだ。
中三の大事な時期に、俺は家で一人だけの生活をしていた。父親からはクレジットカードだけ渡され、自分はサッサと愛人の所へと行ってしまった。
何とか高校に受かり、広い実家の家で毎日一人で飯を食べる。
俺がΩだと解ると、αの友達は一斉に距離を取って接してくれなくなったし、ともすれば自分の性欲を俺で発散させようと考える奴までいて……。だから俺の方から距離を取った。
元々フェロモンは普通だが鼻が効きにくい俺は、俺のフェロモンにあてられたαに間違って項を噛まれて番関係になる事を恐れてチョーカーを着けている。
それに主導権は自分が持っていたい欲求が強く、どのバース性に対しても自分がタチ側だと譲らなかった。
誰かのΩになる事も恐怖でしか無い。それは自分の両親を間近で見ていたトラウマがそうさせていると理解している。
大学へ入学する頃には、すっかり性格がねじ曲がった可愛くないガキが出来上がった。誰も信用出来ないし、世間体の為だけに大学進学しろと言われた腹いせに、勉強なんてしてやるかと殆ど講義にも出ずに遊んだ。
昴とは、お互いに接触がある前から認識があった。あれは入学式の式典の時だ。長く続いていた式の途中で、突然具合の悪くなったΩを昴が介抱していた事がある。それを見てから何となく気になる存在ではあったが、まさか自分の番なんて……。と思ったものだ。
見た目は完全にタイプでは無い。根暗そうな顔の見えない前髪に、適当に着ただろという洋服。全くお洒落に興味が無く、オドオドとした態度。
それにαとしてのフェロモンが薄く、βやΩの奴等でさえも昴の事を馬鹿にしていた。
前に俺が周りの奴等に輪姦されそうになった事があったが、その時助けに来た昴から凄まじい威圧的なαフェロモンが出て、助かった事がある。
初めて昴のαフェロモンが他を圧倒する瞬間だった。そのフェロモンに守られ、俺の中のΩ性が自分のαだと昴を認識して、そうして俺自身も初めて強く昴に対して自分のαなんだと認めた。
それに昴は絶対に俺の側から離れない。
俺が試すように昴に対して嫌な事をしても、言っても、昴は苦笑いを浮かべるだけで俺の側にいる。
大体の奴は俺の試すようなやり方が嫌になって、結局俺の前から消える奴等ばかりだったのに……。
徐々に昴の前でだけは素の自分が出せるようになって、それが心地良くて奴に甘えていたと思う。
一度俺の体調が良くなくて、昴の家で介抱されていた時、夕飯に桃缶が出てきた事があった。それは俺の中で昔の記憶を呼び起こさせるもので……。まだ俺がαだと信じて疑わなかった幸せな時、風邪をひくと母親が決まって桃缶を用意していた事を思い出して、言葉を無くした。
あの幸せな時を……、もしかしたらコイツなら、昴と一緒なら……なんて思ってしまい、昴に興味と執着心が芽生えた事を思い出す。そうして、そう思ったら今まで付き合いのあった奴等はどうでもよくなってしまって……。
昴を俺だけのものにしたいと強く思うようになった。
基本的に誰にでも優しい昴は、俺以外の奴にも優しい。それが俺は許せなくて……。特に宮本に対してはよく笑うし、俺に見せた事の無い表情をよくするから面白く無かった。
まぁ、それもよくよく話を聞けば誤解だったワケだけど。
今まで俺の手から俺が大切だと思うものが零れていくのは当たり前だった日常が、昴によって塗り替えられていく。
アイツは俺に自分の体まで預けてくれる。
αは基本、バース性のヒエラルキーのトップだ。故にタチ側が圧倒的に多い。自分のフェロモンの支配下にΩやβを置いて従えるのだ。
それはもう昔からの本能的部分が大きいが、昴は俺が昴を抱く事を許してくれる。
付き合ってからだともうすぐ六年。今まで昴に抱かれた事は無い。だから番関係も結べてないのだ。
それは俺の中で葛藤があったから。
もし、付き合って別れたら?もし、結婚して離婚する事になったら?
もし、番関係を結んで解消されたら?
そう考えると怖くて無理だった。
番関係を結ぶには、お互いに抑制剤を飲まない状態で事に及ぶことになる。そうして俺が昴を受け入れる側になって項を噛んでもらう。
昴は優しいから、ずっとこのままでも問題無いと言ってくれるが、俺がもっと昴を縛りたくて……。そして、昴に縛られたい。
別れてしまう事への恐怖は常にある。
でも昴となら大丈夫だという確信もある。
だから今回、俺からそれを提案した。
最初昴は、俺が何を言っているのか解らなかったのかキョトッとした顔で俺を見ていたが、何秒後かには顔を真っ赤にさせながらそれでも嬉しそうに俺の提案を受け入れてくれた。
昴も解っているのだ。その提案が俺達の番関係を成せる事だと。
俺の発情期に合わせ、お互い二週間前から抑制剤を飲む事を止めている。
そして今日から一週間、休みをもらっているのだ。
昨日の夜から体が怠く、微熱が続いている。それに異様に昴の匂いに対して敏感に反応してしまう。
今、昴には買い忘れていた食材なんかを買いに行ってもらっていて、俺は自宅で一人昴の帰りを待っているところなんだが……。
部屋の中を歩いていると、箇所箇所で堪らなく良い匂いに引き寄せられて、それを寝室のベッドへ持って行くっていう行為が止められないでいる。
主に良い匂いがしたところは、昴が使っているクローゼットと洗濯籠の中だ。
クローゼットはずっとそこにいたいほど昴の匂いが漂っていたが、より強く昴の匂いが付いた衣類だけ厳選してベッドの上に放り投げる。
洗濯籠の中にあった昴のものは全部寝室に持って来て、今日の朝まで昴が着ていた寝間着になっているスウェットを俺が着る。
ベッドの上は昴の服や下着だらけだが、欲を言えばもう少し欲しい。
俺は再びクローゼットに行くと、今度は引き出しに畳んでしまってある昴の洋服や下着をスンスンと嗅いで、厳選しベッドへ持って行く。
ある程度ベッドの上に衣類が山になっているのを見ると、俺はニッコリと口を歪めてそこから綺麗に自分が収まるスペースを作っていく。
ここに壁をコレで作って……、その上にこの服を飾るだろ?アレ……さっきの下着……。あ、あった。コレをこっちに持ってきて、俺がこう寝るからこの服とこの下着は良い匂いだから下に敷こう。
自分の足元から始めて、みるみるうちに自分が昴の服や下着に埋もれていく。そうする事で自分のαに包まれている多幸感に体の力が抜け、ずっとこの中に埋もれていたいと思ってしまう。
「帰ったよ~」
玄関から昴の声。だけど俺は今ここから出る事が出来ないんだ。悪いな。
パタパタと廊下を歩いてキッチンに行く足音、しばらくして冷蔵庫の開閉音がして
「洋介君~?」
いつまで経っても顔を出さない俺を心配したのか、昴が俺の名前を呼びながら寝室に近付いて来る。
ガチャ。
「洋介君、具合悪……ッ」
部屋の中に入って来た昴は、ベッドを見て言葉を止めると俺に近付いてベッドの端に腰を下ろす。
ギシッと鳴った音に続いて、ソッと昴の服が捲られる。
「洋~介君、あ、見付けた」
「お帰り……」
ボソボソと呟いた俺の頬を昴はスリッと指先でなぞって
「コレ僕が出て行ってから作ったの?」
「ン……」
昴はフフッと嬉しそうに笑いながら
「凄く素敵な巣が出来てるね。僕も入れて欲しいな」
「………………、上手く出来てるか?」
褒めてもらったが、まだ不安が強い。なんせ人生で初めて作った巣だ。
「勿論!世界一素敵な巣を作ってくれてありがとう」
そう言った昴の顔が見たくて、オズオズと視線を上げれば、本当に心の底から言っている嬉しそうな顔があって、俺は安堵と褒められた嬉しさに一度昴の服で顔を隠す。
「あッ、隠れないでよ~。ね、僕もこの巣の中に入れてよ?」
「………………。しょうがねぇな……」
昴に強請られ、俺は腕を持ち上げて昴が入ってこれるスペースを開けると
「ヤッタ、お邪魔します」
嬉しそうにイソイソと俺の隣に入って来た昴は、俺を正面からギュッと抱き締めてチュッと音を出して軽くキスする。
たったそれだけの事なのに、昴の衣類と抱き締められた昴から良い匂いが香って、俺の孔からトロリと体液が漏れ出る感触。
通常Ωは発情期の度に、受け入れやすいように自発的に孔が濡れるように出来ている。だがそれも抑制剤を飲んでいれば濡れない。
俺は抑制剤を飲んでいれば濡れた事は無い。まぁ、それも個人差はあるようだが……。
俺は今まで抑制剤を飲んで相手を抱いていたから、これもまた初めての経験だ。
「もっとしろ……」
「………、もっとしたら止められなくなるけど、良い?」
「……今が良い……」
呟いた直後に昴の舌が俺の唇を舐めて、俺はゆっくりと口を開ける。
オズオズと侵入してきた舌を迎え入れ、絡める。しばらくお互いの舌を絡ませて遊び、昴の好きな上顎を舌先で愛撫すると、堪らずといった感じで鼻から喘ぎが漏れ出る。
最初はキスで息も出来なかった奴が……。
昔の事を思い出し、キスの合間にフフと笑うと
「何?何か面白かった?」
「なんでもねぇ……」
言い終わり再び昴の唇を吸うと、スススと両手を服の中へ潜り込ませプクッと出ている乳首に指先を這わせる。
「ン……ぁ……ッ」
俺が肌を触った瞬間、昴のフェロモンが濃くなり、ブルッと自分の項が粟立つ。それと同時に孔からもまたツッと体液が溢れる感覚。
「気持ち良いなぁ、昴……?」
「ふぅ……、ンッ」
ピンピンと中指の腹で両乳首を弾いていると、無意識に昴が俺の脚に勃ち上がったモノを擦り付けてくる。
しばらくお互いの気分が高まるまで、じっくりと愛撫を続けていたが、堪らなくなった昴が俺のモノをスウェット越しに掴んできたので
「ん?堪んない?……ッ、舐めてやるからコッチ……」
衣類に埋もれていた昴と一緒に巣から出て、穿いているパンツを下着と一緒にずり下げると、ベッドヘッドを背もたれに昴を座らせ、開いた足の間に自分の体を収める。
気持ち良さにビクビクと痙攣している逞しいモノは、鈴口から密をトロリと溢れさせているから俺は舌を伸ばして、見せ付けるように先端に舌先をあて、チロチロと鈴口の孔を舌で上下に舐める。
「ッ……クゥ……ッ、ゥ……」
いきなり先端の愛撫に、昴は喉を仰け反らせて息を詰める。俺は昴の反応に気を良くしてそのまま舌を鈴口からカリ首へと移動させると、括れた部分や裏筋、そこから上へと舌を走らせ、カリ裏の部分を鈴口にかけて執拗に舌に圧を加えて上下する。
「ウ、ァ゛ッ……ァ……、ソレヤバい……ッ」
昴の弱いか所を舌で愛撫していたが、親指と人差し指で輪っかを作り、それにタップリと唾液を絡ませると、指でカリ首をきつく扱きながら、鈴口は舌でチラチラと舐めねぶる。
唾液のせいで乾くのが早いが、都度舌から唾液を垂らして射精感を促していると、昴の腹筋がブルブルと小刻みに痙攣し始めるから、限界が近いのかと追い上げるように手の動きを早くすると
「ア゛ッ……、ハ、ァ……ッ」
堪らないといった感じで喘ぎが聞こえてくる。このまま俺の口に出せよと昴の方へ視線を上げると、眉間に皺を寄せた雄の顔がそこにあって俺はドキリとする。
すると昴はもたれていたベッドヘッドから上半身を離し、俺に覆い被さるような態勢になるとスッとスウェットのパンツと下着の下に手を差し込み、俺の濡れている孔に指を一本確かめるように挿入してくると
「ア……、お、前ッ……ンンッ」
「ハ、ァッ……本当、に……濡れてる……ッ」
クチュリと厭らしい音を立てて、すんなりと昴の指を飲み込む自分に戸惑う。
昴は入れた指で中を探るように動かすと、大体のあたりをつけたか所で指をクイックイッと上下に動かす。
「ア゛!?……ッ、~~~~ッ」
昴の指が触れたか所から、ビリビリと強い快感が広がり、俺は舐めていた先端から舌を外して顔を下に向ける。
ビクビクと背中が波打つのを見て、昴は俺の背中にキスを一つ落とすと
「洋介君……、こっちおいで……」
と、ゆっくりと傷付け無いように指を引き抜き、俺の両脇に手を差し込んでグイッと自分の方へ俺を引き寄せる。
「お前……イキそうだったのに……」
近付いてそう呟いた俺の台詞に、昴はフフと笑って
「勿体無いよ……、それに洋介君の中でイキたいかな?」
言いながらスリッと自分の頬を俺に擦り寄せて、そのまま唇にキスをする。
再び深く唇を合わせて唾液を混ぜ合わせ、チュッと唇を離せば名残惜しそうな舌から糸が橋を作っている。
「服、脱ごっか?」
楽しそうに俺に呟き、俺が返事をする前にもう服を脱がす為両手が潜り込んできて……、俺は何も言わずに昴のさせたいようにすると、あっという間に俺は全裸になる。
俺は昴の上から退くとベッドに寝転がり、服を脱いでいく昴をジッと眺めていると
「何?」
凝視されているのが恥ずかしいのか、少し苦笑いを浮かべながら聞いてくる昴に俺は
「お前……、後悔しないか?俺と番になって……」
ハッキリとこうやって昴に聞いた事は無い。
ずっと俺の側にいてくれるコイツに甘えて、側にいたのは俺の方だ。
運命の番。だから離れられないというワケじゃ無い。そんな都市伝説に振り回されずに番関係を築いている奴等は沢山いる。ならば昴だって選べるはずだ。
俺の台詞に昴は一瞬驚いたような顔を俺に向けて、次いでは柔らかく笑うと
「僕はずっと、洋介君が良いな」
変わらない笑顔を向けられて、俺も微笑み返すと
「そか……」
呟き終わり、俺は昴を迎える為両手を広げた。
◇
「ぅあ゛ッ……、ア~~~ッ……♡♡」
「ココ……気持ち良いよね……ッ?」
昴の指を三本咥え込んでいる俺の内壁は、執拗に気持ち良いと感じるか所を押し潰し、叩き、抉る指の愛撫にビクビクと痙攣し、もっとして欲しいと貪欲にうごめく。
そのどれもが気持ち良い快感と直結していて、既に二回ほど俺は射精させられている。
「僕も好きなトコ、だよ……?」
「ぁ゛~~~、ア゛~~~ッ♡♡♡」
………ッ、コイツ、自分が気持ち良いって思う触り方してんのか………ッ?それって、つまり………ッ俺の、触り方だろッ!?
と、文句の一つでも言いたいが、初めて与えられる快感に、俺の口からは喘ぎしか出てこない。
「コッチは……どうなのかな?」
言いながら昴の指がピンッと立ち上がった乳首を捉えると、人差し指をクイッと曲げてカリカリカリッと突き出した突起を爪で引っ掻くように愛撫する。
「ヒィァッ!………ッア゛、止めッ、~~~♡♡♡止めッ、ろ……ッ」
乳首の愛撫でジンッと広がる快感が堪らなくて、それと連動して内壁も締め付けてしまう。そうすれば中に入っている昴の指をリアルに感じ、また中で快感を拾って抜け出せない。
「んウゥ゛~~ッ、……は、ァ゛ッ、イ゛グッ!♡♡♡」
堪えられずに大きくビクンッと跳ねて、俺は射精せずにイッてしまう。
こんな………ッ、無理だ……。
中でイク感覚は長く、余韻にはぁッ、はぁッ、と荒い息をしていると、昴がクルリと俺の体を回転させ両手で腰をガッシリと掴み自分の方へと引き寄せる。
引き寄せられると必然的に俺の腰だけ高くなるワケで……。
俺は昴が何をしようとしてるのかが解り、首を後ろへ向けて止めようと口を開く。
「オイッ……今、イッたばっ……ッ~~~がァ♡♡♡」
俺の制止を聞かず昴は自分の怒張を一気に俺の中へと侵入させた。
俺は背筋をしならせ、顎を上げて強烈な快感に全身をガクガクと震えさせる。
目の前でチカチカと星が飛び交い、息も上手く吸えずにハクハクと空気を食んでいると、内壁に絞られた昴のモノが堪らずといった感じで前後に動き始める。
「ア゛ッ、また……、イ゛グッ♡♡イ゛グゥ~~~ッ♡♡♡」
ただ律動されただけで、俺は再び中でイッてしまうと、唇から溢れ出した唾液を拭えないほど前後不覚になる。
「あ~~~、洋介……ッ、洋介、凄い、ね………ッフェロモンが……ッ」
昴も俺と同じなのか、うわ言のように俺の名前を呟き、夢中で腰を振っている。
俺が無意識にフェロモンを出しているように、昴からも強烈なフェロモンが振り撒かれ、俺の脳は快感に焼き切れそうだ。
「昴ッ♡♡♡、子宮に……精子、欲し………ッ♡♡」
俺は昴のフェロモンで、本能のままにうわ言を呟く。
パンッ、パンッと穿っていた音が、徐々にバツンッ、バツンッと重くなる頃に
「はぁ~ッ、洋介♡………ッ俺の、Ω………ッ洋介♡」
昴が呟きながら後ろから俺をギュッときつく抱き締めてくる。そうしてそのままグイッと俺を自分の方へと抱き寄せるから、俺は昴の上に後ろから乗るような形になって……。
「グァッ♡深ぁ~~ッ、♡♡♡」
俺の体重で最後まで入っていなかった昴のモノが、グポンッと根本で瘤のように膨らんだ亀頭球を飲み込む。
最後まで入った昴のモノは、下りてきた俺の子宮口とチュッ、チュッとキスをするように小刻みにトントンと動かされ、俺は抱き締められている昴の腕に爪を立てた。
「ギィ、~~~♡♡♡ダ、メ……ッコレ゛……♡♡頭、~~~♡馬鹿……な゛るッ♡♡」
「はぁッ♡、洋介……噛みたい……、僕だけの……♡に、したい……♡♡」
耳元で囁かれる昴の台詞に、俺はキュウゥッと胸が締め付けられ
「噛めよッ♡……、お前の、に♡♡しろぉッ♡~~~ッ♡♡♡」
俺が言い終わらないうちに、昴は俺の項に歯を立てると興奮した衝動のままガブリッと噛み付く。
途端にビリビリと頭から爪先まで全身に電流が流れ、次いでは俺と昴のフェロモンが混ざり合うような不思議な感覚を体感する。
「~~~~~ッッ♡♡♡!」
俺はその不思議な感覚に呑まれながら、プシャッと自分のモノから潮を噴いてしまう。
「ア゛ッ、クッ……、イクッ、イ゛クッ、~~~♡♡♡」
昴も同じ感覚だったのか、今一度俺をキツく抱き締めて俺の中で射精している。
俺は子宮に精子を注がれる快感に、再び中でイッていると、ゆっくりと昴が俺を抱き締めたまま、またバックの態勢に戻り射精しながらグッ、グッと押し付けるようにモノを穿つ。
「ア゛~~~♡、ァ……ッ♡♡♡」
αの射精は長い。抑制剤を飲んでいればβの射精と変わらないが、飲んでいなければ十分から三十分ほど射精し続ける。
亀頭球がある為、腰を振る事は出来ないが押し付けるように奥を捏ねられ、ドクドクと精子を注がれれば嫌でも感じてしまう。
だが俺は初めての快感に体が悲鳴を上げ、昴が射精している時に意識を飛ばしてしまった……。
◇
目が覚めれば、外はまだ明るい。
俺の肩を抱いている感覚に、隣で昴も寝ているのが解る。
俺は寝返りを打って昴の方へ向くと、スヨスヨと寝息を立てている顔とぶつかる。
いつの間にか掛け布団がかけてあって、少しだけそれを捲ればベッドの上には昴の衣類が散乱したままにしてある。
その上で俺達は寝ていて、俺はクスリと笑う。
きっと俺が初めて作った巣だから、そのまま残してくれているのだ。
そうして俺は項に指先を恐る恐るあてると、滑らかな肌にデコボコの感触。
………………。昴とこれで番になれたのか。
急激にその事実が俺に降ってきて、俺の目から涙が溢れる。
これで昴は俺の唯一になった。
これで俺も昴の唯一になれた。
俺が諦めてきたもの。手に出来なかったもの。手から零れ落ちてきたもの。
それが、手に入ったのだ。
静かに泣いていたのに、向かい合った昴はパチリと目を開けて
「何、……泣いてるの?」
言いながら俺の肩を抱いていた手を自分の方へと寄せて
「嬉し涙?」
フフと笑いながら、俺の額にキスを落とす。
「………、そうだな……」
番関係になったからか、優しく、柔らかく、温かい感情が俺を包み込んでいく感覚に、また俺は少し泣いた。
おしまい。
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