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第4話

 どのくらい経ったのか。  目を開けると、まだ白衣の胸の中にいた。  しかし、意識が戻ったことを白衣の相手も気づいたようで。 「気がついたか」  そう言って、手首を取って脈を診られた。 「身体を起こした方が呼吸しやすそうだったから」  ずっとこうしていてくれたらしい。 「……ごめん」  すると貴之はふっと笑った。 「お前そればっかだなー。なら自己管理をキチンとしろよ」  それは少し反省するところ。  しかし、貴之は思わぬ方向から説教を始める。 「ちょっとは考えろよ。  これからお前が結婚した時に、この姿を嫁さんや子供に見せるのか?」  え、と比呂は思わず止まった。  そうなのか、と思ったのだ。結婚して子供ができたりすれば、貴之はこうやって助けに来てくれなくなるのか。恋人もいなければ、結婚する予定も子供を作る予定もないが、寂しさが急激に込み上げてくる。  貴之が来てくれないなんて……。 「そんなの、やだよ……」  拗ねたように反論する。嫌すぎて視界が潤む。  しかし、貴之は嘆息して、まあとりあえず寝ろよ、と比呂の駄々をいなした。 「喘息の原因は分かっているだろ。疲れだよ。おまえ、最近夜遅くまで外出しすぎ。少し翌日のことを考えて自重しなさい」  いつもの幼馴染のお説教に少しだけ安堵して、比呂は深呼吸しながら頷く。 「どうする? ベッドで寝るほうがい?」  そう言われたが、このままがいいと白衣にもたれかかる。 「あれ、まだ泣いてるのか? しんどい?」  貴之の問いかけに比呂は首を横に振る。 「ううん。……ずっと、いて」  僕のそばに。  わかった、と貴之が頭を撫でてくれる。 「安心して寝ろ」  比呂も頷いた。  俺はお前を手放すつもりも、この立場を辞めるつもりもないからな……。  頭上からそんな声が聞こえてきた気がして、比呂は安堵して眠りについた。 【了】

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