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二人で初めての初詣 1
年末年始は二人で過ごすことになって、お互い冬休みになっていたオレたちは湊兄の家でゆっくりとした時間を過ごしていた……んだけれど。
湊兄が急に初詣に行きたいと言い始めた。
オレはそもそも人が多いところが好きじゃないし、騒がしいのもあまり好きじゃない。
だから、この部屋でだらだら過ごしながら寝正月で構わなかったのに……。
「えー……人混み面倒」
「折角だし行こうよ! ね?」
「湊兄だけで行ってくればいいじゃん」
オレが欠伸混じりに言い放つと、頬を両手で捉えられてまっすぐに見つめられた。
「僕は絢斗と行きたい」
「なっ……」
「あ、赤くなった。まだ慣れない? 名前で呼ばれるの」
「違和感があるだけだって! っていうか、近い!」
湊兄は距離感がいつもバグってる。
どこでもスッと近づいてくるから毎回驚かされる。
今も二人しかいない部屋とはいえ、この距離感は流石に気恥ずかしい。
だって、あと少し近づいたりしたら――
「何考えてるの? そんなに真っ赤な顔して、別に照れなくてもいいのに。僕たちお付き合いを始めた訳だし」
「そうかもしれないけど、別にこの体勢で話さなくてもいいことだし」
「僕は絢斗を近くで見られて嬉しいよ?」
「……それは、どうも」
何だかやりにくくて、フイと視線を逸らす。
呼気だけで笑った湊兄が指先でオレの頬を擽ってから漸く解放してくれた。
「そういうところも好き。でも、僕の前で少しずつ打ち解けてくれる絢斗が可愛いから……やっぱり少しずつにする」
「はいはい……湊兄には敵いませんよー」
「もう、ちゃんと名前で呼んでくれないと悪戯しちゃうから」
「何だよ、悪戯って……。だから……湊介?」
オレが顔を上げて名前を呼ぶと、花が綻ぶように笑う湊兄が目に飛び込んできた。
呆然としているオレを問答無用でぎゅうっと抱きしめてくる。
「うん! じゃあ、初詣楽しみにしてるから」
「は? いや、それとこれとは話がちが……」
最後まで抵抗を試みたけれど、笑顔の圧力には勝てなかったので結局頷くしかなくなる。
頷いたところで漸く解放された。
何か普段は物静かで優しい湊兄なのに、たまに妙に押しが強くて断りきれない気がする。
前からこんな感じだったかどうだか、今ではもう分からない。
お付き合いを始めたと言っても、今年のクリスマスにお互いに好きだってことが分かって。
それで湊兄がじゃあ付き合おうって言い出したから、何となく流れでそうなった。
だから、まだこの状態になったばかりで。
なんだかそわそわして、慣れない。
「絢斗はどこの神社に行きたい? 折角なら有名なところに行く?」
「オレは近所の神社でも十分なんだけど」
「でも屋台とか出てたりしたら楽しいでしょう? 一緒に何か食べたいし」
「いいよ、じゃあ湊兄が行きたいところで」
ぼんやりと年末のテレビを流し見しながら、さっきの流れをごまかすように呟いたらまた同じことが繰り返されてしまった。
湊兄……そんなに神社が好きだとは知らなかったな。
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