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二人で初めての初詣 2

   朝から湊兄に叩き起こされて始発の電車に乗った。  オレは眠すぎて目的地まで寝てたけど、その間湊兄に寄りかからせてもらってた。    同じ目的の人たちが結構いたから電車はまあまあ混んでたけど、運良く座れたのは良かった。 +++ 「良く寝てたね」 「ん? あぁ。湊兄が肩貸してくれたから。ふわぁ……」  自然と欠伸が出て目を擦る。  そういえばデートの時は眼鏡禁止令が出て眼鏡はかけてないし、前髪も目に入るからって理由で湊兄に少し切られた。    寝ぼけてたから朝適当にブルゾンを着たのはいいけど、外はめちゃくちゃ寒い。  湊兄はまた水色のコートを着てるから目立ってる気がするけど。  有名な神社に来たせいで人が多い。  ぼやぼやしていたらはぐれそうだ。 「もう、名前で呼んでって言ってるのに」 「何か癖で。誰か知り合いがいても面倒だし、今日は無理に言わなくてもいいと思うんだけど」  オレが欠伸混じりで適当に返すと、むぅと片頬を膨らませた湊兄が不満そうな顔でオレを見つめてきた。 「そうやってすぐごまかす。誰も他の人のことなんか見てないよ。絢斗は気にし過ぎ」 「湊兄がオレのことを名前で呼ぶのは変じゃないけど、オレが呼ぶのは年上なんだから不自然だろ?」 「そういうところだけ妙に拘るんだから。変なところ真面目っていうか。真面目な絢斗も可愛いし好きだけど……」  湊兄こそ、やたらと可愛い可愛いと連発する。  男なのに可愛いっていうのは褒め言葉じゃないと思うけど。  何か頼りない年下まんまっぽいし。  まぁ、オレがヘタれてんのかもしれないけど。  何というか、面倒臭いが先に来ちゃうしエスコートとかそういうの不得手だからか?  そんなこと言われても、急に人は変われないからどうしようもない。  湊兄はふわふわっとしてるのに、やっぱり頼りになる。  今も寝ぼけてるオレのことをグイグイ引っ張って連れて行ってくれている。 「とりあえず並ばないと! 人凄いね。何だか楽しくなってきちゃった」 「うわぁ……人だらけ。何かカップルもいっぱいいるし」  お参りを待つ列に混ざると、順番待ちするようにロープが張られて人数制限されているみたいだった。  ここまでしてお参りするとか、みんなお正月好きなのか? 「はぁ……」 「大丈夫? もう疲れちゃった」 「あ……人混みが苦手なだけ」 「そんなに嫌だった? なんかごめんね。僕が我儘言ったから」  湊兄が申し訳無さそうに顔を覗き込んでくる。  正直、人混みが苦手なのは本当だけど。  楽しそうな湊兄を邪魔したい訳じゃない。 「嫌って訳じゃないから。ほら、進んだ」 「あ、うん」  何とか笑顔で誤魔化した。  湊兄と一緒に出かけるのは嬉しいし、それだけを考えることにして何とか気を紛らわせる。    それから三十分はかかった気はするけど、何とかお参りすることができた。  静かに目を閉じて熱心に何かをお願いしている湊兄の横顔は、相変わらず綺麗だった。

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