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第46話

麗子ママから送られてきた位置情報の近くまできた。 この辺ってゲイタウンじゃなかったっけ…。 マジでこんなところに一人で来るとか危なすぎるだろ。 しかも泥酔って…。 あの人、本当危機感なさすぎ。 息を切らしながら、手当たり次第に店を覗いて探す。 クソ…、店名くらい聞いておくんだった…。 ゲイバー多すぎんだよ……。 先輩の姿が全然見当たらなくて、次がこの通りの最後の一軒。 頼む。ここにいて…。 「…はぁっ、すみません。ここに…、…!!」 いた…!!! 勢いよく扉を開くと、カウンターで酔い潰れている先輩がいた。 「………こんな子!!!!」 店主のママであろう人は、俺を指差して顔を赤くしている。 いや、今はそんなことどうでもいい。 先輩がいた。本当によかった…。 先輩をお姫様抱っこして、寝顔を見つめる。 あぁ、こうして近くで見つめるのっていつ以来だ…? やべぇ…。俺、先輩のことすげぇ好きだ。 「え?待って待って。アンタ、この兄ちゃんの知り合い?」 「いや、これで知り合いじゃなかったらヤバいでしょ。」 近くに座っていたチャラチャラの関西人と、比較的まともそうな黒髪の男を睨む。 まさかこいつらが飲ませたんじゃねぇよな? 「ちゃうで!?俺ら一滴も酒飲ませてへんからな?!」 「この人、店に入ってきた時からこんな感じでしたよ。」 二人は慌てて否定した。 少しでも飲ませたようなら、手を出していたかもしれない。 「すみません。ありがとうございました。」 「ええんやで。てか、彼氏さんかな?兄ちゃん起きたら注意したってな、飲み過ぎはあかんでって。」 「そうですね…。」 彼氏…だよな?今はまだ。 別れ話してないし。てか、させないし。 「この人、何か言ってました…?」 「あー…、なんかネカフェ泊まるとか言うてたよな?」 「言ってたね。」 「はぁ……。」 聞いてよかった。 このあとホテル取ろう。 先輩ってば、一体何考えてるんだ? 柳津さんの家飛び出したり、泥酔状態でゲイタウン踏み込んだり、しかも宿はネカフェだ? そんなの俺が許すわけないでしょ…。 「とにかくありがとうございました。」 「え、帰っちゃうのぉ?!お名前教えてっ!」 「あー…、えっと……」 お礼を言って店を出ようとすると、店主に捕まる。 苦笑して立ち往生していると、チャラい関西人が助けに入った。 「こら、ママ!恋人持ちにそんなん言うたらアカンよ。ほら、アンタもこんなゴリゴリのおっさんに捕まる前にはよ帰り!」 「イオちゃん酷い!」 「兄ちゃん抱っこして、キャリーバッグ転がしてって、いける?」 「大丈夫です。」 「そっか。ほな気ぃつけて。」 半ば追い出されるような形で店を出る。 着ていた上着を先輩にかけ、治安のいい場所に立地するビジネスホテルを探した。

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