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第47話
途中公園のベンチに座って、スマホでホテルを探す。
先輩は全く起きる気配はなかった。
「酒くさ…。」
お酒は得意じゃないはずなのに、一体どれだけ飲んだのか。
急性アルコール中毒とかにならなくてよかった。
さっきの店で確認したけど、財布も、免許やカードも、スマホもキャリーケースも全部盗られてなさそうだったし。
この人、強運すぎるだろ。
先輩の頭を自分の太腿に乗せ、気持ちよさそうに眠る先輩の髪を撫でる。
このままずっと眠っていてくれればいいのに。
それなら、先輩のそばにずっといられるのにな…。
しばらくスマホで検索していると、比較的会社から近い場所にあるビジネスホテルが見つかった。
先輩がネカフェなんかに泊まらないよう、出張に行くまでの11連泊ができるか電話で確認する。
『可能ですよ。お一人様ですか?』
「はい。先払いってできますか?」
『はい、先払いも対応しております。お食事はどうされますか?』
「あー……、なしでいいです。」
『かしこまりました。では、本日5月28日から6月8日朝チェックアウト、一名様でお間違いないでしょうか?』
「はい。それでよろしくお願いします。」
電話を切り、先輩をおんぶする。
食事付けた方がよかったかな…?
でも、好きな時に食べにいけないのとか逆に不便だろうし、飯はあわよくば俺の手料理を食ってほしいし…。
受け取ってくれるかどうかは置いといて…。
ホテルに到着し、先に支払いを済ませる。
先輩を連れて中に入ろうとすると、フロントの女性に止められた。
「お客様は一名様と伺っておりますが…。すぐに出られるのであればいいんですけど…。」
「あー……」
先輩を部屋に寝かせてすぐに出るつもりだったけど、少し心配になってきた。
今日だけ泊まるか…?
「すみません。今日だけ2名っていうのは無理ですかね…?」
「できますが、その場合お部屋の種類が変更となりますので、本日と明日からで別のお部屋に移動していただくことになります。」
「あぁ…。俺は適当に寝るので、シングルのままで構わないですよ。」
「かしこまりました。」
結局部屋はシングルのまま、今日だけ二人分の料金を払ってフロントを後にする。
部屋に入って、ベッドに先輩を横たわらせた。
上着をハンガーにかけ、ベッドの隅に腰掛ける。
小さく寝息を立てながら、気持ちよさそうに眠る先輩の前髪を分ける。
発作起こすほど苦手な俺の前で、こんな無防備な姿見せてていいのかよ?
寝てるから分かんねーか…。
「先輩……」
うっすらと開いた唇。
少しカサついた唇を指で撫でる。
こんなに柔らかかったっけ…。
気持ちよくて、ふにふにと摘んでいると、「ん…」と先輩は小さく声を出した。
どうしても気持ちが抑えきれなくて、眠る先輩の唇に、優しく唇を重ねた。
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