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第48話

あぁ、俺って馬鹿だな…。 少し触れるだけのキスで止めようとしてたのに、終われるわけなかった。 柔らかい先輩の唇。 一回じゃ満足できなくて、何度も何度も角度を変えて重ねる。 これ以上はダメだ。 そう思って離れようとした時、先輩の腕が俺の首に回り、引き寄せられた。 「……しろ…さ…き……」 「〜〜っ」 涙が出そうになった。 無意識に俺の名前を呟いた先輩。 あまりにも嬉しくて、俺は先輩を抱きしめて唇をまた重ねた。 舌でノックすると、唇が少し開いて、その隙間から舌をねじ込む。 先輩の口内は酒臭いけど、温かくて気持ちよくて、俺は夢中になって貪った。 「んっ…、ん……」 先輩の感じてる声。 何度も聞いて、耳に残っていたはずのそれが、ひどく懐かしく感じる。 好きだ。愛してる。 「先輩っ…、先輩……ッ」 起きないで。 このまま眠っていてください。 起きたら、この夢のような時間は終わってしまうから。 「先輩…っ、好き……、愛してます…っ」 ぼろっと大粒の涙が溢れた。 こんなに思ってるのに、あんなに愛し合ったのに、どうしてこうなってしまったんだろう? 全部俺が撒いた種だって分かってる。 俺が悪いのは分かってるんだ。 でも、どうか許してほしい。 また、前までみたいに俺に愛されて、そして俺を愛してほしい。 「先輩……」 ぎゅぅっと力強く抱きしめると、先輩も無意識に俺の背に手を回した。 夢みたいに幸せで、俺から先輩を離すことなんてできなくて、抱きしめたまま眠りについた。 久々に熟眠して、目が覚めた時にはもう陽が昇り、カーテンから朝日が差していた。 先輩はまだ爆睡していて、最後に触れるだけのキスをしてベッドから出る。 先輩が起きる前に荷物を片し、俺の痕跡を失くす。 逃げ出すようにホテルを飛び出した。 外に出て、スマホである番号に電話をかける。 「もしもし。」 『なぁに…、こんな朝から……』 電話越しに、まだ眠そうな麗子ママの声。 朝から起こしてしまったのは少し申し訳ないけど、話がおかしくなる前に伝えておかないと。 「ごめん、麗子ママ。先輩のホテル代、麗子ママが出したってことにしといて。」 『え…?どーゆうこと…?』 「あのあと先輩をホテルに寝かせてきたんだよ。ネカフェ泊まるとか言ってたらしいから、先輩のホテル代払ってきた。麗子ママの名前で払っといたから、先輩が何か聞いてきたら麗子ママが払ったってことにしといて。」 『え?えぇ…?』 「よろしく。」 俺は麗子ママにそれだけ言って電話を切り、帰路に着いた。

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