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第49話

家に着いて、ベッドにうつ伏せになる。 あーーー…………。 先輩とキスしちゃった。 ヤバい。俺、よくあれだけで耐えた。 感傷的になってたのが救いかもしれない。 先輩の唇の感触とか、漏れた声とか思い出したら無理だ。 「………俺のバカ…っ」 俺の股間に位置するソレは非常に欲望に素直で、思い出しただけで熱を持つ。 先輩を思いながら扱くと、間も無く爆ぜた。 先輩のことが好きだ。 どうしようもなく大好きだ。 人として、恋人として。 今は欲望に負けてこんなことしてしまってるけど、正直先輩がプラトニックな関係を望むなら、それを受け入れる覚悟くらいできてる。 身体が俺を拒否するなら、心だけでも繋がっていたい。 先輩を愛したい、先輩に愛してほしい。 「う〜……、会いたい………。」 今朝まで勝手に添い寝してたくせに、俺は我儘だ。 キャリーバッグから先輩のパンツ盗んでこなかったことを褒めて欲しい。 ていうか……。 「気づかない…よな……?」 先輩って地味に勘の鋭いときがあるから、ホテルの支払いのこと、バレてないか不安だ。 しかも咄嗟に支払い者の名前、麗子ママの本名にしちゃったし。 ミスったよなぁ…。 もし先輩が勘づかずに、麗子ママが払ったって騙されてくれたとしても、それはそれであの人の性格的にすげぇ気を遣いそう…。 そんなこと考えている内に少しウトウトしてしまい、何度も覚醒と傾眠を繰り返していると、麗子ママから着信がきた。 「なに……」 『言っちゃったわよ。』 「は…?」 『ホテルの支払いしたの夏くんだって。』 「はぁっ?!」 『ついでに言いたいこといっぱい言っちゃった。初めて綾ちゃんに怒っちゃったわよ。』 「何してんの、本当に!!」 『見てられないもの。』 「あ…のさぁ……。俺だって色々考えて……」 あまりグイグイいって先輩を困らせないように。 先輩ができるだけ心穏やかに過ごせるように。 今の先輩にとって俺がパニック因子なら、俺はできるだけ先輩の生活に現れちゃダメなんだ。 だから、本当はアピールしたいし、先輩のこと好きだっていっぱい伝えたいけど、それを我慢してるってのに…! 『ちゃんと話しなさいって念押ししておいたから。』 「そんな簡単に済む話なら、とっくに話してるんだけど。」 『そうかしら?綾ちゃん、スッキリした顔してたけど?』 「え?」 『もしかして何か引っかかってたのかもね。那瑠ちゃんと今でも会ってると思ってたみたいよ?会ってないから、ちゃんとお話しなさいって言ったら、必ずって言ってたわ。近々連絡くるんじゃないかしら?』 「マジ…で…?」 『そういうことだから。お願い事破っちゃったのはごめんなさいね。』 放心状態で返事もしなかったから、麗子ママの方から電話を切った。 俺から先輩に連絡をしようと思ったけど、距離を置いてるからどうなんだ? 先輩から連絡来るのを待つべきなのか…? というか、そもそも先輩から連絡来ることなんかあるのか…? ずっとスマホと睨めっこしていると、夕陽が落ち始めたくらいの時間に、【望月綾人】俺の大好きな人の名前が画面に表示された。

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