50 / 242

第50話

『ホテル、ありがとう。近々会って話がしたい。お互いが出張のこと落ち着いたら、会ってくれないか?』 マジで来た……。 やっと話を聞いてもらえるのか? これ、夢…じゃないよな…? 会いたい。今すぐ会いたい。 出張とか待ってられない。 俺は先輩の連絡先を開いて、発信ボタンを押す。 『………もしもし?』 電話越しに、不安そうな先輩の声が聞こえた。 「先輩っ?連絡してよかったんですか?!」 『へっ…??』 「先輩、身体平気ですか?体調悪くないですか?お酒の飲み過ぎはダメですよ。俺、すげー心配したんですから…。それに、一人であんなとこ行っちゃダメです!今後二度と一人であの辺には踏み入れないと誓ってください!!」 言いたいことを早口で伝えた。 いっぱい言いたいことある。 連絡していいなら、いっぱいしたかった。 ずっと我慢してたのに…。 嬉しい。 先輩の声が聞けて、どうしようもなく嬉しい。 『ごめん。なんの話…?』 先輩は昨日のこと、覚えていないらしい。 そりゃあんなに酒臭くなるほど飲んだらな…。 朝、びっくりしただろうな。 「覚えてないくらい飲むとか本当に危ないですから!たまたますぐに知れたから助けに行けたけど、俺がいなかったら先輩、他の男に食われてたかも…」 一瞬想像して、ゾッとした。 先輩が俺以外の誰かに抱かれるなんて…… 「うわ。考えたくもない。」 『お、落ち着けって…。』 「あー……もう……。」 ダメだ。 嬉しすぎて自分の言いたいことばっかり言って、先輩の話聞かなきゃ。 落ち着け。落ち着け、自分…。 深呼吸して、気分を落ち着かせる。 『城崎……?』 不安そうに俺を呼ぶ先輩。 あぁ、会いたい……。 「俺は出張落ち着いてからじゃなくて、今すぐ会いたいです。」 『っ……』 本音を言うと、先輩は言葉に詰まった。 うん、ダメだよな。 だからこそのあの言い方なんだろうし。 「でも我慢します。先輩の心の準備もいるだろうから。先輩が話せそうなときに教えてください。」 『う、うん…。』 かなり譲歩した。 今すぐホテルに会いに行きたいけど、それじゃ今までと変わらない。 やっと俺と話す気になってくれた先輩を怖がらせて、やっぱり話せませんなんてことになったら、それこそ死ぬまで後悔しそうだ。

ともだちにシェアしよう!