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風邪引いた話①

『風邪引いたから俺の家来て』 『鍵空いてるから勝手に入って』  そんな無愛想な文章と家までの地図の画像が送られてきた。送り主は高槻礼央。恋人である。  送り主の家の前に立ち、ドアノブを引くと本当に扉が開いた。不用心ね、なんて独りごちて家主の元に向かうと、簡素なパイプベッドの上で掛け布団に包まって咳き込む男の姿があった。 「……イリヤ、ごめんね……きてもらって、ッげほ……っ、」 「何でそんなに弱ってるのにアタシを呼んだのよ」 辺りを見回して、彼が一人暮らしをしていることを初めて知り、つい毒づいた後でそのことに気付く。彼は苦笑しながら、息絶え絶えに小さく呟いた。 「ひどくない……?俺、弱ってる、から……イリヤに看病してもらいたかったんだけど……」 「アタシに移したかったの?風邪」 「酷いよぉ……っ、ごほっ、けほ……っ」  熱もあるらしく、潤んだ瞳と上気した頬を此方に向け、手で口許を抑えて相変わらず咳をする彼に、持ってきたビニール袋の中身を見せ、1つずつそれを取り出す。 スポーツドリンクの入ったペットボトルのキャップを捻り、食器棚に仕舞われていたコップを勝手に取って中身を注いだ。 「……、仕方ないわね……ほら、飲み物……、あと……冷えピタでも貼っておきなさい」 同様にビニール袋の中に入れていた冷却シートの封も開け、彼の汗ばんだ額に貼り付ける。彼は少しだけびくりと身体を震わせたが、すぐにふにゃりと目を細めて、相変わらずの小声でありがとうと呟くのだった。 ビニール袋の他に持っていた自らの鞄から、本日の講義の内容を記したノートを取り出して彼に見せる。 「あとアンタが取ってた講義でアタシと被ってたモノはノート取ってるから……、」 「ふふ、イリヤ……優しいね……」 「まぁ恋人が弱ってるならね、アタシだって多少は優しくするわよ」 「、嬉し……」 彼は寝返りを打ち、天を仰いではぁ、と浅い呼吸を繰り返していた。その様子はあまりにもつらそうで、思わず腰を上げて掛け布団を彼に被せ直す。 「喋るのもつらいなら寝てなさいよ……」 「だって、寝たら……イリヤ帰っちゃ……ぅ……」 「帰らないわよ……」 「かえら、ない……?」 首を此方に向け、服の裾を掴む彼は普段の様子とは全く違い、少しばかり可愛い、と思ってしまった。どうしても帰って欲しくないらしく、裾を掴む力の強さは本当に病人か疑わしいほどだった。 仕方なく、その場に腰を下ろして彼の頭を撫ぜる。 「……、今日は暇だし……少しだけなら、いてあげる」 「そぉ……、ありがと……じゃあ、」 「何?」 彼は、自分が先程頭を撫ぜていた腕を掴んで布団に押し込んだ。いきなりの事で戸惑っていたら、更に驚くべき発言をしてきたのだ。 「暑いから、服、脱がして……?」 「……は?服くらい自分で脱ぎなさいよ」 「ひどいよイリヤぁ……看病してくれるんじゃなかったの」 「服はさすがに脱げるでしょ」 「ぬげなぁい……」 咳のし過ぎで掠れ気味の声で甘えられるものだから、つい此方も母性本能が擽られてしまった。彼のシャツを捲り上げて、ゆっくり腕から抜く。汗でべとつく身体を、近くに置いてあったタオルを洗面所で濡らして拭き上げた。 しかし、何故か彼は不服そうな顔を見せている。 「……、何よ、上半身だけでいいわよね?」 「……下も、」 「はァ!?下ぁ!?」 「下ぁ……」 彼は此方の腕を掴み、自分が履いている下着の中に手を突っ込んできたのだった。やはり、彼の力は強く振り解く事ができなかった。手に当たる、普段よりも熱を持った彼自身の其れを触りたくなくて、必死に手を抜こうとするがなかなかできない。 「ばっかじゃないの!?それは自分で脱ぎなさいよ!」 「やだ……」 何度も彼は自身を手に擦りつけようとしてきて、此方としては早く手を抜きたいのに手が抜けない。されるがまま、擦り付けられるように下着の中で手を動かされる。  どうしようもないので手を抜くのを諦め、空いた片手でズボンを脱がす。 「アンタ絶対ヤる気でしょ……」 「……、うん、イリヤとえっちしたい……」 「アタシは風邪引いてる男としたくないわよ」 「えぇそんなぁ……やだ、えっちしたい……、普段、俺の家とか……来てくんないじゃん……」 「……それは……忙しいから、」 依然、彼は息絶え絶えに会話をするが、言ってることがおかしい。何故、こんなに体調を崩しているのに性行為をしたがるのか。自分が家に来たことがそんなに嬉しいのか、ずっと手を離さない。  彼は此方を潤んだ瞳でじっと見つめ、吐息混じりにこう呟いた。 「でも、今日は……来てくれたから……、此処で……イリヤと……えっちなことしたい……」 「……何も今じゃなくても」 「やだ……今しよ……」 「……ッ、腕、引っ張んないで」 「だって、イリヤ……このままだったらしてくれない……」 「ッ、分かったわよ……ヤればいいんでしょヤれば……」 「ん、ありがと……」 はぁ、と思わず溜め息が漏れてしまう。彼は心底嬉しそうに目を細め、腕を掴む手を緩めた。 本当に、自分は彼に対してとても甘いということを身を以て実感したのだった。 「……、何すればいいの」 「……上に乗って、」  彼に指示されるまま、ベッドに上がり掛け布団を捲る。彼の横たわる身体に跨り、腰を下ろした。 「……、ん……っ、重くない?」 「重くないよ……、いい眺め」 「うるさい……」 「はぁ……やば、興奮してきた……」 腰を下ろした位置を間違えたのか、彼の局部が股の間に当たり、其れがやたら熱を持っているものだから思わず生唾を飲み込んでしまう。 彼は此方の腰を持って絶えず其れを押し付けてくる。やはり、手に込められた力が強くて本当に病人なのか疑わしい。 「待って、やだ、そんなに揺らさないで……っ、」 「……、可愛い……イリヤ……」 腰を揺らされると、いつも行為をしているあの動作を思い出してしまい、思わず甘い声が漏れてしまう。まだ何もされていないのに、恥ずかしくてしょうがない。  彼は依然、息を荒くして腰回りを撫でてくる。 急に、着ていたブラウスをスカートの中から引っ張り出され、中に手を突っ込まれた。手は上半身を弄り、胸のある所をしつこく撫でてくる。 「、どこ触ってんの……ッ、バカぁっ……」 「……おっぱい……、」 「……なん、で……」 「イリヤおっぱい触られるの好きじゃん……」 「うっさい……、ッ……」 「かわい……乳首、たってる……」 「ッ、やだ……それ、やだァ……♡」 彼に弄られすぎて、性感帯になってしまった胸の突起を何度も指で弄られる。普段より熱を持った指が其処を何度も弾き、爪で引っ掻くものだからびくびくと身体が震え、思わず腰をもどかしく揺らしてしまう。 「やなの……?腰振ってるのに?」 「っばか……ん、やァっ……」 「あ、イリヤ……此処壁薄いから、声我慢してね……できる……?」 「、そのくらい、できるわよ……ッ、!」 「ん、頑張ってね……」 頑張って、なんて彼は言うが先程より指で与えてくる刺激が強く、普段声を上げまくってる此方からしたら、唇を噛んで俯くくらいしか耐える方法がない。 そんな反応を楽しんでるのか、彼は此方を見つめ目を細めている。凄く腹立たしい。 彼は指で両方の突起を根元から親指と中指で強く摘み、先を人差し指の爪で何度も引っ掻いた。襲い来る快感に思わず目を丸くし、慌てて手で口を覆ったが甘い声が漏れてしまう。自分の快感に対する耐性のなさを身を以て実感した。 「かわいー声、漏れちゃってるね……」 「、ちが……ッ、あ……ッ!」 「イリヤ、声我慢するの下手だもんね……、声……上げてもいいけど……イリヤの可愛い声、俺……誰にも聞かせたくない……だから、頑張ってね……」  手を離さず、言葉で詰ってくる彼の声はいつもより少し低く掠れており、そんな声が逆に情欲を掻き立ててくる。声を抑える為に口を塞げばいいのか、彼の声を聞かないように耳を塞いだらいいのか、自分の手の行き場が分からず彼の腕を緩く掴んでいたが、依然彼は手を離す素振りを見せない。  誰にも聞かせたくない、なんて言いながら弱い所を何度も何度も責め立て、声を上げさせようとしてくるから彼は本当に意地の悪い男だ。 「やだ、ぁ……ッ、もぉ……、ちくび、やだァ……、いつまで、さわるのぉ……」 「イくまで」 「ッ、やだ、もぉはなしてぇ……」 「離さない、おねだりしても……絶対離さないから……」 「やだ、やだぁ、もぉやめて……ッ、やなの……」 「はァ……、可愛い声そんなに上げちゃって……俺以外の、人間に……そんな声聴かれたいの……?」 「ちが、やだれおッ、やだぁ……ちくび、やだなのぉ……」 しつこく何度も同じ所を責められ、思わず涙が溢れ、スカート越しに自分の其れが頭を擡げていることに気づき、羞恥で涙が零れ落ちる。自らの快感に対する弱さをこれほど呪ったことはないだろう。声を抑えろと言われているのに甘い声は絶えず漏れ、耐えられないほどの羞恥と快楽に、頭が回らなくなっていた。 「やだなの?かわいい……、俺、そんな可愛いイリヤ見てたら、熱上がっちゃう……、早く、看病して……?」

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