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城下町 アスミ4

 「そうだ!やっぱりカグラ、いや、カグラ様推しの人だよ!!」 俺は、レヴェルリーで神生類のライブがあると、いつも一番前でステージにかぶりつきで見ていた人を思い出した。 確か、ケンショーさんの友だちの弟さんだったんじゃないかな?って事は、そのお兄さんがトシさんか? バーカウンターに入っている時に少し喋った事がある。俺がショウもカグラも友だちだと言うと、心底羨ましそうにしながらも、特に紹介しろとも言わなくて好感を持ったんだよな。 その人の名前がヨシさんだった気がする。そうルイとトワに説明した。 「うわぁ・・・よりによってカグラ推しかよ。なら、アスミと長の事を反対したら、カグラを出せばいいんじゃねぇの? 何かそれですべて解決しそう」 トワがそう言うと、ルイが顔をしかめる。 「カグラはなるべく出したくないなぁ。あれは最終兵器だから・・・」 そう言って、ルイはこの世界のカグラ様の事を教えてくれた。 「アスミくんも、前世のカグラとは友だちなんだよね?前世でもカグラって最強だったじゃない?でもね、それでも普通の女の子だったんだ。 それがこの世界では、力と魔力まで最強なんだよね・・・あのカグラが、物理的にも国一つ滅ぼせるほどの力を持ってるんだよ?どれだけ危険な存在か分かるでしょ? って、前世でそう設定したのは僕なんだけど・・・多分設定してなくても自力でそうなったと思うし・・・」 「な、なるほど・・・」 それは確かに危険だ。正直怖すぎる。 前世でもあれだけ破天荒だったのに! 「まぁ、どうしてもそのヨシさんが反対するよなら、本当に最終手段としてカグラを投入しよう。 で、そのお兄さんがトシさん?その人とは面識ないの?」 「ん~確かトシさんはシーナさんに惚れてて、何でも言うことを聞く感じだったんじゃないかな?口説きまくってるけど、シーナさんはケンショーさんが好きであんまり相手にしてなかったような・・・」 「なら、アスミくんがシーナさんを攻略したら、トシさんの方も何とかなるかもね。残るは長老のタイショーさん?」 「あぁ、ケンショーさんの伯父さんって言ってた。この人については全く分からないなぁ。シーナさんとシーアさんのお祖父さんらしいけど」 「・・・タイショー・・・」 ルイが何か考えている。 「ねぇ、アスミくんはレヴェルリーでバイトしてたんでしょ?なら、MAGのジュンさんって知ってる?ショウとカグラのお祖父さんで、こっちでは前魔王様なんだけど」 「もちろん!俺、MAGファンだったんだ。ケンショーさんに教えてもらって、ライブ見たらめちゃくちゃカッコよくてさ。ジュン様やべーよな!あの色気と存在感は唯一無二だろ。 そうか、こっちでは前魔王様なんだ。今やっとジュン様と前魔王様が同一人物だって認識したわ」 「なら話は早いね。そのジュンさんが昔CDを出してたレーベルの代表者の名前が、タイショーさんだったような・・・?印象的な名前だから覚えてたんだけど」 「ルイすげー!!それ当たりだよ!前世のケンショーさんに、インディーレーベルやってる親戚の親父がいる、って聞いた事ある!」 「ならそうだね。そのタイショーさん、ジュンさんの熱狂的な信者だよ」 「おっ!なら、前魔王様に頼んで、そのタイショーって長老にアスミを認めるよう言ってもらえばいいんじゃね?」 「・・・トワ、普通に考えて、こっちのタイショーさんは、前魔王様と面識ないよ。てか、そんな事前魔王様に頼めるわけねーだろ。 まっ、それを言ったらカグラ様もだけど。カグラ様に一目会えばこっちのヨシさんもすぐ落ちそうだよなぁ」 そう、前世のカグラを知ってるからそれが分かる。なんて言うか、不可能を可能にする女なんだよなぁ・・・ 「いや、アスミくん。前魔王様もカグラと同じタイプなんだ。どっちも破天荒だから。て言うか、ジュンさんが元祖。『元祖破天荒』で契約精霊はライオン。とにかく王に相応しい魔族だよ。 で、その娘、つまりショウとカグラの母君で、現魔王様の妹君のカグヤ様が『真破天荒』。真って称号がしっくり来る、一番神がかってる方だね。現在の魔族最強でもある。何てったって契約精霊が白虎だから。 そしてカグラが『新破天荒』。契約精霊はホワイトライオン。もう説明は不用でしょ。 この三人は好き勝手に生きてるだけで、結果的に魔族の国を発展させてるんだ。思いつきで天災レベルの事態を引き起こしながらね。 それに巻き込まれた周りは、ひたすら後始末やその後の対応に追われて・・・」 ルイがすごく遠い目をしてるよ・・・大変なんだな。カグラが後二人もいたら・・・うん、考えたくないね。 けどその、元祖、真、新ってネーミング、前世のゲームか映画何かかよっ?!しかもまあまあ前のヤツなっ!って、えっ?アスラ様が付けた?・・・・・・ソウデスカ・・・ 「タイショーさんが前魔王様に会えば、前世と同じように信者になると思う。で、前魔王様はこの話を聞いたら、絶対に面白がって山狼族に会いに行くよ。カグラと同じ感じでね。 だからアスミくん、タイショーさんの反対がキツくてどうしようもなくなったら、前魔王様に頼むのもまぁありだ。僕が話を通してあげる。 けど、これもカグラと一緒で最終手段だからね」 それでもすごくありがたい。自分で何とかするつもりだけど、正直、最終手段があるってだけでかなり気が楽になった。

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