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城下町 アスミ3
「ふうん・・・なら、山狼族は魔族の脅威にはならないね。安心した」
ルイが次代魔王候補らしい目線でそう言う。
「これはアスミくんの質問の答えにもなるかな。前世とこの世界の・・・魔族もドラゴン族も含めてあえて人間って言っちゃうけど、人間の人となりは変わらない。全く違うように見えても、その本質は同じなんだ。しかも、この世界の方が本質に近くなるみたい。ショウがその一番の見本」
この世界のショウは前世とは違い、全く拗れず幼い頃からルイを溺愛している。
だが、前世で拗らせていた頃のショウも、本心ではルイが好きで好きで堪らなかった。
それは、前世でショウとルイが結ばれる前も後も見て来た、トワによって証明されたようだ。トワには十七歳までの前世の記憶がある。
ルイには十五歳までの記憶しかなかったので、この世界のショウがずっと優しいのは、自分が小説でそう設定したから?と悩んでいたらしい。だが、前世でも結ばれた後はデロデロに甘く、拗らせ中もそうしたくて堪らなかった、と、ショウ自身が言っていたとの事で・・・
「だからきっと前世でも、アスミくんとケンショーさんは結ばれているよ。で、そんな人が長なら山狼族も信用出来る。
まぁ元々、山狼族は完全に独立した部族で、山さえ荒さなきゃ魔族と揉める事もなかったし、脅威とは思ってなかったんだけどね。山を下りて魔族に混じる人がいても寧ろ歓迎してたくらいだから。
歴代の魔王様も、山狼族を無理に魔族の国に属させようとはせず、昔から上手く共存していたみたい。だからほんと絶滅してなくて良かったって思う。
それに、今の長の人となりが分かって更に安心したっていうか。アスミくんの番なら、そのうちに会えそうだね。狼の契約精霊にも会えるのは楽しみだなぁ」
ルイがそう言うとトワも同意する。
「だよな~狼だけじゃなくて他の犬科動物の契約精霊も見たい。何の動物がいるんだっけ?」
俺は、他の五人とその契約精霊の話をした。ついでに、番として認めてくれなさそうな話も。
「へ~、コヨーテにジャッカル、リカオン、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーか!強そうなのばっかじゃん。いいな~犬科の猛獣か~犬も大型犬だし!」
可愛い大型動物が好きだと言うトワは、ゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバーの精霊に会いたいらしい。
けど、俺もまだ会わせてもらってないからね?
「その五人は前世でも長の周りに居たはずだよ?アスミくん、記憶にない?」
そう、ニ人には心当たりがあるんだよな。
「うん、双子の従姉妹は知ってる。ライブハウスによく来てたから。俺らより二歳年上のシーナさんとシーアさん。
シーナさんはケンショーさんが大好きみたいで、よく俺を威嚇してきたな。けど、悪い人じゃないんだ。俺が客に絡まれてるのを助けてくれたり、床に落として割れたコップの片付けを手伝ってくれたりしたし。
シーアさんは・・・俺がケンショーさんにちょっかい出されてるのを見て、ニマニマ笑ってるような人?」
「あ~あれか。美見会のメンバーみたいな人か」
トワの言葉に首を傾げていると、ルイが説明してくれた。
「僕たちが前世で通っていた高校は、同性カップルが多くてね。その校風を作ったのが前世での魔王様。王妃のアスラ様が入学してくる前にそういう下地を作ったんだ。アスラ様が男(魔王様)と付き合いやすいようにね。
で、最初は魔王様の親衛隊だった集団が、そんな二人を見守る会になって、更に進化したのが美見会。『美しき推しを見守る会』の略なんだって。
それが魔王様とアスラ様が卒業してからも、受け継がれていったんだ。その校風に惹かれて入学する同性愛者も多かったけど、いわゆる腐女子って人たちも多くてさ。
ショウと僕も、リュウセイくんとトワくんもかなりお世話になったんだよね」
その美見会のメンバーが、同性愛を否定するヤツや、二人の仲を邪魔するようなヤツを徹底的に排除してくれたらしい。
シーアさんはそこまでじゃないけど、ケンショーさんと俺をくっつけたがっていたように思う。
「なら、その従姉妹は大丈夫なんじゃないかな?多分、この世界でもそんな感じでしょ。他の人に心当たりは?」
ルイの言葉に必死で記憶を辿る。
「う~ん・・・あっ!ヨシさんって、神生類のファンでカグラ推しかも?!」
「「はぁっ?!!」」
ルイとトワの声が重なった。
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